こんにちは。
経済産業省の令和2年度第3次補正予算が公開されました。
これにより令和3年の国の補助金(中小企業向け)の見通しが明らかになりました。
経済産業省「令和2年度第3次補正予算案(経済産業省関連)の概要」
本記事では今回初登場となる「中⼩企業等事業再構築促進事業」について紹介・解説したいと思います。
2020年12月23日時点で公募要領は発表されていません。あくまで事業概要からの考察になります。
記事の信頼性
中小企業診断士として補助金獲得のコンサル歴は12年。
これまでの採択件数は80件以上、採択率は「80%~90%」です(過去の採択実績)
中⼩企業等事業再構築促進事業とは?
今年初登場の補助金です。予算規模はなんと1兆1,485億円です。
これがどのくらいの規模感かというと、いま人気の大型補助金「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」をぜんぶ足して、さらにその他支援事業を加えても、前年の予算は3,600億円でした。
中小企業向けの補助金にこれだけ大きな予算が割り当てられたのは初めてではないでしょうか?
事業の内容
事業目的・概要
抜粋
- 新型コロナウイルス感染症の影響が⻑期化し、当⾯の需要や売上の回復が期待し難い中、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するために中⼩企業等の事業再構築を⽀援することで、⽇本経済の構造転換を促すことが重要です。
- そのため、新規事業分野への進出等の新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編⼜はこれらの取組を通じた規模の拡⼤等、思い切った事業再構築に意欲を有する中⼩企業等の挑戦を⽀援します。
- また、事業再構築を通じて中⼩企業等が事業規模を拡⼤し中堅企業に成⻑することや、海外展開を強化し市場の新規開拓を⾏うことが特に重要であることから、本事業ではこれらを志向する企業をより⼀層強⼒に⽀援します。
- 本事業では、中⼩企業等と認定⽀援機関や⾦融機関が共同で事業計画を策定し、両者が連携し⼀体となって取り組む事業再構築を⽀援します。
解説
補助事業の事業目的から、「補助対象事業となり得るかどうか」や「どういった視点で審査されるのか」を予想することができます。
個人的な見解になりますが、下記の項目は必須要件になるかと思います。逆にいうと下記の項目に該当しない事業は補助対象から外れることとなりそうです。
- 新分野展開
- 業態転換
- 事業・業種転換
- 事業再編
- 規模の拡⼤
申請時に上記5項目のいずれかにチェックをつけ、事業計画書の中でそれを説明する必要があるのではないかと予想しています。
ただし、「思い切った事業再構築に意欲を有する中⼩企業等の挑戦」とありますので、今までのビジネスにちょっとプラスアルファしただけという事業計画では厳しいはずなのですが。
モノは言いようなので、「どこがやねん!」という内容でも採択されてしまいそうな気がしています。
また、「中⼩企業等と認定⽀援機関や⾦融機関が共同で事業計画を策定」という文言が盛り込まれています。
以前はものづくり補助金の申請時に認定支援機関確認書という書類が必要だったのですが昨年から不要になりました。個人的にはあまり意味のない書類だと思っていたのですが、また復活しそうな雰囲気ですね。
成果目標
抜粋
事業終了後3〜5年で、付加価値額の年率平均3.0%(⼀部5.0%)以上増加、⼜は従業員⼀⼈当たり付加価値額の年率平均3.0%(⼀部5.0%)以上の増加を⽬指します。
解説
ものづくり補助金と同様に3~5年の数値計画を立てる必要がありそうです。
条件(対象者・対象行為・補助率等)
抜粋
※本事業では電子申請のみを受け付けます。
解説
補助金事務局は外部機関に委託されるようです。
過去に補助金事務局を委託された外部組織は以下のとおりです。
- ものづくり補助金 → 全国中小企業団体中央会および地域事務局
- 小規模事業者持続化補助金 → 日本商工会議所
- IT導入補助金 → サービスデザイン推進協議会(電通+その他)
- エネルギー合理化支援事業及び各種省エネ補助金 → 環境共創イニシアチブ(電通+その他)
- JAPANブランド育成支援事業(特別枠) → JR東日本企画
- 持続化給付金 → サービスデザイン推進協議会(電通+その他)
中⼩企業等事業再構築促進事業の委託先は、
- 全国中小企業団体中央会
- 電通系組織
あたりになるのではと予想しています。
また申請方法は電子申請によってのみ受付とのことなので、「J-Grants」による申請となるでしょう。
事業イメージ
補助対象要件
抜粋
①申請前の直近6カ⽉間のうち、任意の3カ⽉の合計売上⾼が、コロナ以前の同3カ⽉の合計売上⾼と⽐較して10%以上減少している中⼩企業等。
②⾃社の強みや経営資源(ヒト/モノ等)を活かしつつ、経産省が⽰す「事業再構築指針」に沿った事業計画を認定⽀援機関等と策定した中⼩企業等。
解説
ポイントは、
- コロナ前と比べて売上が下がっていること
- 経産省の「事業再構築指針」に沿った計画であること
ですね。
「事業再構築指針」がどのような指針なのか今のところ不明です。
補助対象経費
事業再構築支援事業のリーフレットに補助対象経費が掲載されています。
抜粋
建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計等)、研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)等が補助対象経費に含まれます。
【注】補助対象企業の従業員の人件費及び従業員の旅費は補助対象外です。
解説
注目したいのは、
- 建物費(おそらく建屋の建設費用)
- 建物改修費
です。
おそらく業態展開に伴う工場や社屋などの建て替え費、改修費が補助対象になるものと思われますが、こうした経費が対象になるのは非常に珍しいです。
補助金額・補助率
抜粋
※1.中⼩企業(卒業枠)︓400社限定。
計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本⾦⼜は従業員を増やし、中⼩企業から中堅企業へ成⻑する事業者向けの特別枠。
※2.中堅企業(グローバルV字回復枠)︓100社限定。以下の要件を全て満たす中堅企業向けの特別枠。
①直前6カ⽉間のうち、任意の3カ⽉の合計売上⾼が、コロナ以前の同3カ⽉の合計売上⾼と⽐較して、15%以上減少している中堅企業。
②事業終了後3〜5年で、付加価値額⼜は従業員⼀⼈当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成すること。
③グローバル展開を果たす事業であること。
解説
目をひくのは「中堅企業」という概念ですね。
中小企業基本法で「中小企業」と「小規模企業者」の定義を定めていますが、「中堅企業」に関する定めはありません。
「中堅企業」の定義については今後公募要領などで明らかになるものと思われます。
多くの方に該当するのは、「中小企業(通常枠)」だと思われますが、
- 補助上限額:6,000万円
- 補助率:2/3
という破格の条件が提示されました。
ただ、6,000万円の補助金を受けるためには9,000万円の投資が必要となり、補助上限額いっぱいまで申請できる企業は限られてきそうです。
事業再構築のイメージ
抜粋
- ⼩売店舗による⾐服販売業を営んでいたところ、コロナの影響で売上が減少したことを契機に店舗を縮⼩し、ネット販売事業やサブスクサービス事業に業態を転換。
- ガソリン⾞の部品を製造している事業者が、コロナ危機を契機に従来のサプライチェーンが変化する可能性がある中、今後の需要拡⼤が⾒込まれるEVや蓄電池に必要な特殊部品の製造に着⼿、⽣産に必要な専⽤設備を導⼊。
- 航空機部品を製造している事業者が、コロナの影響で需要が激減したため、当該事業の圧縮・関連設備の廃棄を⾏い、新たな設備を導⼊してロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に⽴上げ。
解説
事業再構築のイメージとして3つの事例が紹介されています。
事業計画の基本シナリオは、
- 成長が期待できない既存事業の縮小または撤退
- 成長が期待できる新規事業への進出
という感じになりそうです。
今からやっておくべきことは?
まだ詳細な公募要領が公開されていないので、提出資料の準備という点ではできることは限られてきますが。
- GBizIDプライムのアカウント作成(まだ作成していない場合)
- 事業再構築の構想
- 予算の見積もり、概算見積もりの取得
GBizIDプライムのアカウント作成
申請方法は電子申請のみで郵送・持ち込みは受けつけないようなので、電子申請用のアカウントを取得しておく必要があります。
おそらく「JGrants」という補助金申請システムを使うことになり、「JGrants」を利用するために「GBizIDプライム」という電子申請サービスのアカウントを取得する必要があります。
参考電子申請システム「GBizIDプライム」のアカウント作成方法(2022年7月5日更新)
現在、事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模企業持続化補助金、Japanブランドなど、国が管轄する補助金の申請方法は ...
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事業再構築の構想
事業再構築というのは会社の将来を大きく左右する重大な意思決定を伴いますので、これからの事業展開について慎重に考える必要があります。
補助金の有無に関わらず、自社のビジネスを再構築するべきか否か、再構築するなら何をどう変えるのかということをじっくり考える時間をとって欲しいと思います。
予算の見積もり、概算見積書の取得
事業再構築に取り組むうえで、どのような経費が発生するのか、どのような設備が必要になりそうかなど、時間に余裕があるうちに検討しておきましょう。
補助金申請の応募締切のぎりぎりになっても、設備の仕様が決まらず見積書が作れないという会社は意外と少なくありません。