小規模事業者用 雇用調整助成金(5月19日版)まとめ

最近、雇用調整助成金について相談したいというご連絡を頂く機会が増えました。雇用調整助成金と言えば、社労士さんの範疇というイメージですが、普段、社労士さんとお付き合いのない小規模事業者の場合、スポットでの申請支援になるので断られてしまうケースも少なくないようです。そのため、相談先がなく途方に暮れる方もいるようです。

そこで今回は雇用調整助成金について、簡単にまとめてみたいと思います。

重要

本記事は、5月19日に開示された公募要項の内容に基づいて執筆していますが、公募要項に変更が生じる可能性があります。特に1日あたりの上限金額が8330円から15000円に引き上げが予定されていると報道されていますので、正式に発表されてから申請することをおすすめします。公式サイトで最新情報を確認していただくようお願いします。

この記事はこんな方におすすめです

  • 小規模事業者の方
  • 新型コロナ感染症の影響で従業員を休ませた方
  • 雇用調整助成金の申請を検討している方
  • 雇用助成金の概要を知りたい方

 なぜ、雇用調整助成金はわかりにくいのか?

雇用調整助成金というのは、従業員を休ませた際に会社から従業員に支払われる休業補償を助成する制度です。機械設備の購入時の補助のように物的証拠が残らないので、経営者と従業員が口裏を合わせて不正に助成金を受け取るいわゆる不正受給が起こりやすい制度なんです。

そのため、不正防止のためにかなり細かい規定が設けられており、昔から慣れている人でなければ取っ付きにくい助成金でした。

現在、新型コロナ感染症の影響で多くの会社が従業員を休ませなければいけない状況になり、雇用を維持できずに解雇に踏み切る会社が続出するのを見越して、助成率の引き上げ、規定の緩和、申請の簡略化が随所に盛り込まれました。

ところが、こうした支援拡大が段階的に行われるたびに情報がアップデートされつづけること、申請ガイドブックには、「通常は〇〇〇だけど、今回の特例では〇〇〇」という説明や、「こういう場合は〇〇〇だけど、こういう場合は〇〇〇」という場合分けが非常に多岐にわたるため、結果として、「やっぱりわかりにくい」という印象を持たざるをえません。

「わかりにくい!」という世間の声を受けて、5月19日に更に手続きが簡略化されましたのが、今回取り上げる小規模事業者向けの雇用調整助成金です。d

制度概要

小規模事業者用雇用調整助成金ホームページはこちら

助成率・助成上限額

従業員に支払った休業手当の67% ~ 100% ※要件をどれだけ満たしているかによる

助成上限額 8,330円/人・日

助成対象者

下記の全ての要件を満たす事業者が助成対象となります。

  1. 従業員数が20人以下であること
  2. その他、募集要項に記載の要件を満たしていること

助成対象期間

従業員を休ませた1か月間 ※複数月にまたがるときは1か月毎に申請する必要があります。

助成対象要件

下記の全ての要件を満たす方が助成対象となります。

  1. 新型コロナウイルス感染症の影響で、前年同月比で5%以上売上(または生産量)が減少していること
  2. 1か月間で従業員2人あたり1日以上休ませ、かつ休業手当を支給していること
  3. 休ませた従業員は有給休暇扱いでないこと
  4. その他、募集要項に記載の要件を満たしていること

申請期限・申請方法

支給対象期間の翌日から数えて2カ月以内

申請方法は、次のいずれかの方法で管轄の労働局またはハローワークへ提出します。

  1. オンライン申請
  2. 必要書類を郵送で提出
  3. 必要書類を窓口へ持参

必要書類

  • 様式特小第1号(別紙も含む)
  • 様式特小第2号
  • 様式特小第3号
  • 売上が前年同月比で5%以上減少したことがわかる書類(売上簿、レジの月次集計、収入簿など) ※前年度と今年度の2か年分
  • 休業させた日や時間がわかる書類(タイムカード、出勤簿、シフト表など)
  • 休業手当や賃金の額がわかる書類(給与明細の写しや控え、賃金台帳など)
  • (事業主以外に役員等がいる場合)役員名簿(性別・生年月日が入っているもの)
  • 通帳またはキャッシュカードのコピー
  • その他、審査で加点を希望する場合に必要な各種書類

事前準備

支給申請マニュアルを入手

まずは下記ホームページにアクセスして、支給申請マニュアルを入手しましょう。

小規模事業者用雇用調整助成金ホームページはこちら

これが支給申請マニュアルの表紙です。

提出資料の作成

休業実績を確認

まず最初に行う作業は休業実績の確認です。使用する書類は、様式特小第2号(新型コロナウイルス感染症)です。

①申請対象期間

支給申請は1か月単位で行います。通常は給与の締め日に合わせて行います。20日締めであれば、令和2年4月21日~令和2年5月20日という感じになります。

②従業員数

雇用保険に加入している従業員数を入力します。

ポイント

2カ月を超えて使用される者が対象です。ただし、2カ月を超えていなくても雇用期間の定めのない者および2カ月を超える雇用期間の定めのある者を含みます。

③休業手当支払い率

休業した従業員に対して、給与総額の何パーセントを支払ったかです。

1日あたりの賃金が10,000円の従業員が会社を休んだとき、月給から10,000万円を休業控除として差し引きます。これに対して休業手当として7,000円を支払った場合、休業手当支払い率は70%となります。

会社を休ませたけど、給料を満額支払ったという場合は100%となります。ただし、有給休暇として休ませた場合は休業扱いとはなりません(有給休暇は従業員の権利であり、会社要請で取得するものではないので)

ポイント

従業員によって休業手当支払い率が違う場合は、次の3通りの考え方で計算して、一番高い支払い率を選択できます。

支払い率が60%の従業員が5人、80%の従業員が2人、100%の従業員が3人の場合

  • 最も多い従業員に適用している支払い率を採用:60%
  • 全員の支払い率を単純平均:(60+80+100)÷3種類=80%
  • 全員の支払い率を加重平均:(60×5+80×2+100×3)÷10人=76%

④1日の労働時間

これは会社で決めている1日の所定労働時間です。9時出社の17時退社(昼休憩12時~12時45分)という会社の場合ですと、労働時間は7時間15分ですので、7.25時間と入力します。

ポイント

就業規則や雇用契約書、労働条件通知書などに記載されている労働時間を使います。

⑤従業員氏名

休業した従業員の氏名を入力します。

⑥雇用保険被保険者番号

⑤の社員の雇用保険被保険者証に記載されていますので、番号を転記しましょう。

⑦休業日数

⑤の社員が会社を丸一日休んだ日数です(①の対象期間内の合計時間)。なお、有給休暇で休んだ日はカウントしません。

⑧休業時間

⑤の社員が午前だけ働いて午後は半休となったとか、定時退社時間より2時間早く退社したなど、時間単位で休業した時間の合計です(①の対象期間内の合計時間)

端数も含めてよいので、2時間30分早く退社した日が3日間あった場合は、7.5を入力します。

⑨休業手当

⑤の社員に支給した休業手当の合計金額を入力します(①の対象期間内の合計金額)。

助成率の確認

まず次に行う作業は助成率の確認です。使用する書類は、様式特小第1号(別紙)です。

 

①事業主名

会社名を入力してください

②はい・いいえを選択

フローチャートに従ってチェックをします。

①4月1日の休業有無

支給申請期間に令和4月1日以降の休業が含まれている場合は「はい」にチェック、含まれていない場合は「いいえ」にチェックします。

②解雇の有無

令和2年1月24日から支給申請期間の末日まで誰も解雇していない場合は「はい」にチェック、解雇した場合は「いいえ」にチェックします。

③休業要請

各都道府県知事からの休業要請対象となった業種で、1日でも休業を行っていたら「はい」にチェック、休業要請の対象業種に該当しない場合・該当するが休業していない場合は「いいえ」にチェックします。

④休業手当の支払い

休業手当支払い率が100%または休業手当が1日あたり8,330円以上であれば「はい」にチェック、そうでない場合は「いいえ」にチェックします。

⑤休業手当の支払い率

休業手当支払い率が60%より高い場合は「60%より高い」にチェック、60%の場合は「60%」にチェックします。

⑥A~Eを選択

A~Eのうち該当する助成率にチェックをします。Bに該当する場合は休業手当の支払い率に対応する助成率を選択します。

支給申請書を作成する

まず次に行う作業は支給申請書の作成です。使用する書類は、様式特小第1号(新型コロナウイルス感染症)です。

会社の情報や助成金を振り込んでもらう振込先口座を入力します。

売上高の計算

売上高が前年同月比で5%以上減少した月があるかどうかです。ここでは「はい」を選択します。ないと助成対象外となります。

ポイント

売上高が減少したことの証拠書類として、同月で前年度と今年度の2か月分の月次の売上高を示す資料(売上簿、レジの月次集計、収入簿など)例えば、2019年4月と2020年4月の売上簿などを提出書類として添付する必要があります。

休業の有無

従業員2人あたりで1日以上の休業を行ったかどうかという質問です。従業員1人が1日休業するのはOKですが、従業員1人が0.5日休業するのはNGです。従業員2人が0.5日休業するのはOKです。ここでは「はい」を選択します。

助成額の計算

助成額はExcelに設定された数式で自動計算してくれますので、特に入力不要です。助成金額がいくらになるのか確認しておきましょう。

支給要件確認申立書

雇用調整助成金を受けるにあたり、基本的な要件を満たしていることを確認します。要件といっても、過去に不正受給をしたことがあるかどうかとか、暴力団関係者でないかどうかとか、そういう内容です。様式特小第3号(新型コロナウイルス感染症関係)という書類を使います。

①はい、いいえの選択

ここでは「はい」を選択します。

②役員情報

代表取締役以外に役員がいない場合は、「性別」「生年月日」を記入します。代表取締役以外にも役員がいる場合は、別途「性別」「生年月日」を記した役員名簿を提出する必要がありますので、ここでの入力は不要です。

添付資料について

ここまでに作成してきた提出資料以外に以下の書類を添付資料として提出します。

  • 休業した月と1年前の同じ月の売上などがわかる書類(売上簿、レジの月次集計、収入簿など)
  • 休業させた日や時間がわかる書類(タイムカード、出勤簿、シフト表など)
  • 休業手当や賃金の額がわかる書類(給与明細の写しや控え、賃金台帳など)
  • (役員等がいる場合)役員名簿(性別・生年月日が入っているもの)

※ 事業主本人以外に役員がいない場合及び個人事業主の場合は、提出不要です。

提出先について

オンライン申請の場合

オンライン申請が楽なのでオススメです。

オンライン申請はこちら

郵送の場合

管轄ハローワーク一覧はこちら

さいごに

いかがでしょうか。

小規模事業者については、申請方法が随分簡素化された印象です。これなら、社労士にお願いしなくても自分で申請手続きできそうですね。

本記事が雇用調整助成金の申請手続きの参考になったら幸いです。