こんにちは。
これからものづくり補助金に申請しようと考えている方に向けて「ものづくり補助金の対象経費」について解説します。
一番読んでほしいポイントは、
- 基本的な考え方
- 補助対象経費の「機械装置費・システム構築費」
です。
それ以外は自分に関係ないと思ったら読み飛ばしてもらってOKです。
記事の信頼性
中小企業診断士として独立し、中小企業の経営支援をしています。
補助金コンサルの経験は12年になります。
2022年7月時点の採択件数は120件以上、採択率は「80%~90%」です。
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Twitter(@KeisukeMatsumo7)
重要
本記事は、執筆(または更新)時点の公募要項の内容に基づいて執筆していますが、今後、公募要項に変更が生じる可能性があります。そのため、ものづくり補助金ポータルサイトで最新情報を確認していただくようお願いします。
基本的な考え方
初心者にありがち。補助対象になると思っていたのに実は補助対象外なもの
以下の3つは対象外です。
はじめて補助金を使う方が割と勘違いしがちです。
- その①:すでに使ってしまった経費
- その②:パソコン、スマホ、タブレットなど
- その③:消費税
- その④:売ろうと思っているもの
順番に解説します。
その①:すでに使ってしまった経費
人づてに「とりあえず申請したら補助金もらえる」と聞いた人に多いセリフです。
以前買った設備の分も補助金申請したらお金が戻ってくると思っていたパターンです。
ものづくり補助金は、交付決定の後に発注した経費が対象で、それ以前に発注した経費は対象外です。
というか、ものづくり補助金に限らず、ほとんどの補助金は交付決定を受けた後の経費しか対象になりません。
事業再構築補助金なら、事前着手申請を行うことで、すでに使ってしまった経費も遡って補助金申請することが可能です。
その②:パソコン、スマホ、タブレットなど
パソコン、スマホ、タブレットなどは対象外です。
他にも、WordやExcelといった汎用ソフト、プリンタ、複合機、自動車など、使いまわしのきく機器やシステムは対象外です。
対象外となる理由:
補助金は申請書に書いた事業計画に取り組むための経費が対象になるいう前提があります。
パソコンは補助事業以外のことにも使いまわしのきく設備としてみなされるためです。
その③:消費税
消費税は対象外です。
税別価格の1/2または2/3が補助金の対象となります。
その④:売ろうと思っているもの
少し考えたらわかると思いますが、補助金を使って買ったものを販売するのはNGです。
ご利用は計画的に。支払いに関すること
続いて支払いに関して、ありがちな疑問にお答えします。
- その①:先に補助金を受け取れるのか
- その②:経費は手形で支払ってもいいのか
- その③:リースを使いたいのだが
順番に解説します。
その①:先に補助金を受け取れるのか
結論は「受け取れない」です。
補助金は原則後払いです。
ざっくりいうと全ての事務手続きを終えて1~2か月後に補助金を受けとれます。
つまり、すべての経費をいったん立て替える必要があり、その間の資金繰りに注意を払う必要があります。
その②:経費は手形で支払ってもいいのか
結論は「手形はNG」です。
ものづくり補助金は銀行振込による支払いが原則です。
ただし、少額の場合は現金やクレジットカードによる支払いもOKになる場合があります。
その③:リースを使いたいのだが
結論はOKです。
ただし、対象になるのは補助対象期間だけ。その後は全額自己負担です。
なのでリースはコスパ悪すぎです。
補助対象経費
ものづくり補助金の補助対象経費は8つ(グローバル展開型は9つ)あります。
ですが、「機械装置・システム構築費」と「外注費」以外はあまり使わないと思います。
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
- 海外旅費(グローバル展開型のみ)
順番に解説していきます。
機械装置・システム構築費
ものづくり補助金の目玉です。なのでここは詳しめに解説します。
補助対象となる範囲は割と幅広めで、ハードウェアでもソフトウェアでもOKです。公募要領に書いてある内容を抜粋するとこんな感じ。
- ① 専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費
- ② 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
- ③ ①若しくは②と一体で行う、改良・修繕又は据付けに要する経費
必ず単価50万円以上の機械やシステムを1つ以上ふくめること
ものづくり補助金の基本要件です。
というか、補助対象に50万円以上の機器やシステムがないなら、ものづくり補助金にわざわざ申請する必要もないかなと思います。
自作OK
自社開発の設備もOKです。
ただし、補助対象となるのは部品代だけです。
開発に要する従業員の人件費などは対象外です。
開発の一部を外部に委託する場合は、外注費として別項目で計上可能です。
リース・レンタルは一部OK
基本OKです。
ただし、対象期間の分だけが対象になるので借用期間によっては注意が必要です。
- 日単位、月単位で借りる場合は請求金額をそのまま計上してOK
- 年単位で借りる場合は期間で案分した分だけがOK。それ以外はNG
例えば、レンタル費用が年120万円、補助事業の実施期間を10か月とすると、
120万円 × 10 ÷ 12 = 100万円
が補助対象経費となります。
「改良・修繕」はOK
要するに「補助金で購入する設備を特別仕様に改造する場合はその改造費もOK」ということです。業者に改造をお願いする場合はもちろんですが、たぶん部品を買ってきて自分で改造する場合も部品代は対象になると思います。
ただし、既に持っている設備の改造費は補助対象外です。
設備の設置工事費用はOK。ただし基礎工事はNG
設備を設置する際の据付工事や配線工事は基本OKです。
ただし、とても重たい機械設備を設置する場合、設置場所の整備や基礎工事が必要になることがあります。
こうした整備工事や基礎工事は補助対象外なので自己負担で行う必要があります。
中古品はOK
ただし、ちょっとハードル高めです。
購入予定先とは別に2社の相見積書が必要です。中古品なので型式や年式など条件を揃えるのが大変そう。
技術導入費
結論は「ごく一部を除いてあまり使われない経費」なので気にしなくてOKです。
知的財産権(特許など)の譲渡や使用権などにかかる経費が対象です。
開発系の会社向けですね。
専門家経費
結論は外部の専門家に有償でアドバイスを求めるなら気にしておくべき経費です。
大学教授などの学識経験者、弁護士や医師などの専門家に助言を受けた場合に発生する謝金や旅費等の経費が対象です。
これも開発系の会社向けですが、生産ラインを改善するために技術士や企業OBにアドバイスを求める場面はあるかも。
運搬費
結論は「ごく一部を除いてあまり使われない経費」なので気にしなくてOKです。
読んで字のごとく、運搬、宅配、郵送料にかかる経費が対象です。
ちなみにですが、
機械を買う場合、搬入費が見積書に含まれることが多いですが、機械の搬入費は機械装置費の中にまとめて計上します。
クラウドサービス利用費
結論は、「クラウドサービス利用費は要件がややこしくて面倒」です。
なので、それっぽいものはクラウドサービス利用費に計上しておいて、あとで(採択されてから)事務局に細かく確認するのが安全です。
公募要領の説明文を抜粋したのが以下です。
- 専ら補助事業のために利用するクラウドサービスやWEBプラットフォームの利用費であって、他事業と共有する場合は補助対象となりません。
- 具体的には、サーバーの領域を借りる費用(サーバーの物理的なディスク内のエリアを借入、リースを行う費用)、サーバー上のサービスを利用する費用等が補助対象経費となります。サーバー購入費・サーバー自体のレンタル費等は対象
になりません。 - サーバーの領域を借りる費用は、見積書、契約書等で確認できるもので、補助事業期間中に要する経費のみとなります。したがって、契約期間が補助事業期間を超える場合の補助対象経費は、按分等の方式により算出された当該補助事業期
間分のみとなります。 - クラウドサービス利用に付帯する経費についても補助対象となります(例:ルータ使用料・プロバイダ契約料・通信料等)。ただし、あくまでも補助事業に必要な最低限の経費であり、販売促進のための費用(公開のためのホームページ作
成料等)は対象になりません。 また、パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用は対象となりません。
サーバー購入費・サーバー自体のレンタル費等は対象外だけど...
汎用性がなければ、用途によっては「機械装置・システム構築費」で補助対象になる可能性があります。
補助対象になるのは補助事業期間だけ
このへんは「機械装置・システム構築費」のリース・レンタルの考え方と同じですね。
ルーター使用料・プロバイダ契約料・通信料
金額的にあまり大きくなさそうで、補助事業とそれ以外の切り分けが難しい。なので経費計上するのは微妙かも。
ホームページ作成料
結論は「早まらず採択後に事務局に確認してから判断」がいいと思います。
販売促進のためのホームページはNGと書いてあるので、サービス提供のためのホームページ部分はOKとなる可能性があるからです。
こう考えています。
- ランディングページ → NG
- サービス紹介ページ → たぶんNG
- サービスを利用するために情報をインプットするページ → たぶんOK
- サービスを利用してアウトプット情報を閲覧するページ → たぶんOK
いずれにしても、あとで却下されるかもしれませんが、それっぽい経費は全て補助対象経費として申請しておくのが良さそうです。
原材料費
結論は、「単価の高い原材料以外はあえて申請しない」です。
あえて申請しない理由
面倒なわりには金額が小さいから。
- 余った原材料は補助対象外です
- 受け払い簿で使用量と残量を記録する必要があり面倒
金とかダイヤモンドなど超高価なものを使って何かを試作する場合は原材料費として計上してOKだと思います。
外注費
結論は、「開発系は使う可能性大」の経費です。
加工、設計(デザイン)・検査など、試作開発の一部を外部に委託する場合に対象になります。
外注先に機器やシステムなどを丸ごと製作してもらう場合は「機械装置・システム構築費」のほうで計上します。
委託業務を行うために外注先が購入した機械やシステムはNG
言うまでもなく、外注費がめちゃくちゃ高くなってしまうので少し考えたらわかりますね。
- 研磨をお願いした外注先が研磨機を購入して、購入費用を加工費として計上した → NG
- デザインをお願いした外注先がデザインソフトを購入して、購入費用をデザイン費として計上した → NG
- 検査をお願いした外注先が検査装置を購入して、検査費鵜養を検査費用として計上した → NG
すべてNGです。
外注費の上限額に注意
少しややこしいルールです。
外注費の合計額は、補助対象経費総額(税抜き)の2分の1が上限となります。
こんなイメージです。
- 機械装置・システム構築費:300万円 外注費:200万円 → 外注費が補助対象経費の1/2以下なのでOK
- 機械装置・システム構築費:300万円 外注費:400万円 → 外注費が補助対象経費の1/2以上なのでNG
知的財産権等関連経費
結論は「ごく一部を除いてあまり使われない経費」なので気にしなくてOKです。
特許など知的財産の取得に関係する経費が対象になります。
ただし、書類作成費や翻訳料(国際特許の場合)、出願手続き代行料など弁理士に支払う報酬はOKですが、
出願料、審査請求料、特許料など特許庁に納付する費用はNGです。
海外旅費
グローバル展開型のみ申請できる経費です。
海外事業を拡大・強化するために必要な海外渡航費や宿泊費が対象になります。
まよったら事務局に確認しよう
思い込みは厳禁です。
補助対象になると思っていたのに補助対象にならなかったり、
補助対象外と思って諦めていたら、後で補助対象だったことがわかって後悔したり。
僕は判断に迷ったら事務局に問い合わせしていました。割と親切に対応してくれます。
以上です。