こんにちは。
補助金獲得のコンサル歴は12年。
これまでの採択件数は80件以上、採択率は「80%~90%」です。
これまで蓄積してきたノウハウの集大成として、ものづくり補助金事業計画書の書き方をまとめています。
この記事で学べること
- 補助金に採択されるコツを伝授します
- 補助金初心者に対応。
- 実際に採択された記述例を解説付きで公開。
- ものづくり補助金以外の補助金申請にも応用可能。
- 書いた事業計画書は添削可です(有償)
- もちろん、書く前のコンサルも可です(有償)
基本的には「ものづくり補助金に採択されること」を目的としていますが、ノウハウの本質は「プロジェクト計画の立て方とわかりやすい書き方」です。
つまり、社内向けの設備投資計画の説明資料作成にも応用できますし、金融機関など社外の関係者への事業説明にも応用できます。
注意点
- 補助金の目的に沿っていない事業計画は採択される可能性が低いです
- 会社の過去が採択に影響することがあります
- 書き方が全てではありません。事業計画の内容のほうが大切です
- 補助金審査は競争です。必ずしも採択されるとは限りません
事業計画書に何を書くべきか
ものづくり補助金の事業計画書は、次の3つの計画書で構成されます。
- その1:補助事業の具体的取組内容
- その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
- その3:会社全体の事業計画
その1:補助事業の具体的取組内容
補助事業の実施内容について詳しく書きます。
- 補助事業に取り組むことになった背景
- 現状と目指す姿、今後の取組み課題
- 具体的な実施内容・実施手順
- スケジュール・実施体制など
時間軸は、「過去から現在」と「補助事業をスタートする日から補助事業を完了する日」です。
その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
補助事業の成果をどのように事業につなげていくのかについて詳しく書きます。
- ターゲット市場について(市場規模・市場ニーズなど)
- 競争優位性について
- 事業化への見通しについて
時間軸は、「補助事業を完了する日から3年後から5年後」です。
その3:会社全体の事業計画
補助事業も含めた会社全体の事業計画について書きます。事業計画期間は3~5年、私はいつも5年にしています。
厳密には、数値計画は、電子申請の入力フォームに直接入力するのですが、数値計画の根拠を説明するうえで数値計画そのものも同じ資料に書いておくのが無難です。
数値計画表に書くべき項目
- 売上高、営業利益、経常利益など収支に関わる数値計画
- 付加価値額、人件費、給与支給総額など補助要件となっている項目の数値計画
- 設備投資額、減価償却費などその他の項目
これに数値の根拠を文章で記載します。なかでも売上高の根拠が一番大事です。
いきなり書き始めるのは設計図がない状態で家を建て始めるのと同じ
家を建てるのに設計図なしで、いきなり柱を立てたり、壁をつくることはないですよね。
家を建てるときには必ず先に設計図を書き、設計図通りに家を建てます。
事業計画書を書く場合も同じように、設計図(骨子)が必要です。
とりあえず書き始めてみたくなりますが、グッとこらえてまずは骨子を作成するところからはじめましょう。
骨子は計画書の中で「見出し」という形で表現します。
見出しがないと、文章を読んでいても何について説明しているのか、非常にわかりづらくなりますので、必ず見出しを使うようにしましょう。
見出しのコツ
結論から言ってしまいますが、見出しを設定するコツは、事業計画書の見出しを公募要領で示されている審査項目と対応させることです。
その理由
理由は下記の3つです。
- 審査項目(審査員が評価するポイント)の書き忘れがなくなる
- 審査項目を意識しながら計画書を書ける
- 審査に時間をかけられない審査員がいたとしても効率よく審査できる
特に1番目と2番目の理由を重視しています。
真似してもOK。おすすめ見出し案
「とりあえず何から書きはじめたらいいのかわからない」という人向けにおすすめの見出し案を紹介します。業種や補助事業の内容によって、ベストな見出しは変わってきますので、書きにくい場合は適宜アレンジしてください。
その1:補助事業の具体的取組内容
現状改善の場合
現状改善とは既にあるものを改善する取組みです。
ものづくりなら、既にある生産体制の一部を改善するような取組みが該当します。
サービスなら、既にあるサービス体制の一部を改善するような取組みが該当します。
見出しはこんな感じ(ものづくりで書いています)
【当社について】
会社概要や沿革など、自社がどんな会社なのかを簡単に説明します。
【取組みの背景】
補助事業に取り組むことになった背景や経緯、理由について説明します。
【現状の生産方法について】
現状の生産方法について説明します。
【事業の具体的な取組内容について】
補助事業でどんなことに取り組むのかについて説明します。
(特定ものづくり基盤技術との関係性について)
国が指定する「特定ものづくり基盤技術」との関係性について説明します。
(達成目標)
補助事業で目指す達成目標について記載します。
(技術的課題)
目標達成のために取り組むべき技術的課題について記載します。
(解決方法)
技術的課題を解決するための方策について記載します。
(補助事業の具体的な実施内容)
補助事業完了までの実施項目について順を追って具体的に説明します。
(スケジュール)
上記の実施項目について、いつ、誰がやるのかについて説明します。
(実施体制)
補助事業に関わるメンバーの役割分担やメンバーの技量について説明します。
新規開発の場合
新規開発とは、イチから新しく何かを作る取組みです。
ものづくりなら、新製品開発や新技術開発が該当します。
サービスなら、新サービス開発が該当します。
見出しはこんな感じ(サービスで書いています)
【当社について】
会社概要や沿革など、自社がどんな会社なのかを簡単に説明します。
【取組みの背景】
新サービスの開発に取り組むことになった背景や経緯、理由について説明します。
【新サービスの概要】
実現したい新サービスの概要について説明します。
【これまで取り組んできたこと】
新サービス開発に向けて、これまで取り組んできたい内容について説明します。
【事業の具体的な取組内容について】
補助事業でどんなことに取り組むのかについて説明します。
(達成目標)
補助事業で目指す達成目標について記載します。
(サービスを実現するうえで課題)
サービスを実現するうえで取り組むべき課題について記載します。
(解決方法)
課題を解決するための解決策について記載します。
(補助事業の具体的な実施内容)
補助事業完了までの実施項目について順を追って具体的に説明します。
(スケジュール)
上記の実施項目について、いつ、誰がやるのかについて説明します。
(実施体制)
補助事業に関わるメンバーの役割分担やメンバーの技量について説明します。
(中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドラインとの関係性について)
国が指定する「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関係性について説明します。
その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
その2についてはものづくりもサービスも共通の見出し案を使います。
【本事業が寄与すると想定する具体的なユーザー】
対象顧客について、「どんなユーザーなのか」「どんなニーズがあるのか」などについて説明します。
【市場動向について】
対象市場の特性、現在の市場規模、市場は成長傾向なのか衰退傾向なのか横ばいなのかなどについて説明します。
【競争優位性について】
(競合となりうる商品・サービス)
競合となりうる商品・サービスについて説明します。具体的な商品名などがあれば尚よい。
(当社の技術・商品・サービスが優れている点)
どこが差別化ポイントなのかについて記載します。
【事業化の見込みについて】
(事業化の時期)
補助事業で得た成果物をどのようにして発売にこぎつけるか。
やるべきこととスケジュールについて説明します。
また、補助事業完了後もやり残した開発アイテムがある場合は、発売できる状態になるまで何をしなければならないかということについても説明します。
(営業展開の方法について)
社内の営業マンによる直販なのか、代理店を使うのか、ネット販売なのか、広告宣伝はどうするのかなど、営業戦略的なことを記載します。
(収益計画について)
補助事業の成果によって得られる売上高や利益の見通しについて記載します。
(資金調達の見通し)
事業化までに必要となる資金とその調達方法について明らかにします。
何を書けばいいのか説明します:「その1:補助事業の具体的取組内容」【前置き】
見出し案をもとに、それぞれの見出しでどのような内容を書くのか見ていきましょう。
【当社について】
あなたは初めて訪問する会社で商談するとき、用件を切り出す前に自分の会社について紹介していますか?
私は必ず自己紹介するようにしています。
補助金申請書も同じです。
「あなたが何をやろうとしているのか」の前に「あなたの会社はどんな会社なのか」ということがインプットされていると、とてもイメージしやすくなります。
自己紹介は短すぎず、長すぎず、適度なボリューム(だいたい5~10行くらい)。例えば、以下のようなことを書きます。
- 会社の歴史(簡単に)
- 業種・業態、取り扱っている商品・サービス
- 顧客層
- 年商とか従業員の規模
百聞は一見に如かず
写真も入れましょう。
- 主な商品の写真
- 工場やお店の写真(外観・内観)
- 生産設備の写真(製造業の場合)
【取組みの背景】
ビジネスの世界では「WHY」が重要です。
あなたが審査員なら、どちらか一方を選ばなくてはならないとしたら、どちらの会社を選びますか?
- 補助事業に取り組むことにした背景や理由をちゃんと説明している会社
- 補助事業に取り組むことにしたのか背景や理由を説明していない会社
同じ条件なら、私は背景や理由をちゃんと説明している会社を優先します。
勘違いされそうなので、念のため
ここでいう背景や理由というのは、補助金を申請することにした背景や理由ではないです。新しい機械や新しいシステムを導入しようと思った背景のことです。
背景や理由は、会社固有のものなので、これが正解というものはありませんが、例えば以下のような内容は背景や理由となり得ると思います。
- 取引先から要望に対応するため
- 小ロット受注が増えたので、小ロット生産時の生産性を高めるため
- 自社の強みと新たなビジネスチャンスを活かして、新しいサービスを開発するため
- 生産性を高めて、残業や休日出勤を減らすため(働き方改革)
正解はないけどNGはある
例えば、
機械が古くなったから、補助金で新しい機械に買い換えたい
ものづくり補助金で、老朽化を理由に設備を買いかえるのはNGです。
その他には、
省エネ性能に優れた設備に買い換えたい
といった理由も、ものづくり補助金の趣旨に合わないのでNGです。ただし、省エネ目的の場合は省エネ補助金に応募することは可能です。
【現状の〇〇について】
【現状の〇〇について】という見出しは「現状改善」の取組みのときによく使います。
「現状改善」とは、生産性向上やサービスの質向上など、より高みを目指して、現状の生産方法やサービスの提供方法など現状の何かを改善することです。
なので、何もないところからスタートする新製品の試作開発や新サービスの開発といった取組みの場合には必要ありません。
ポイントは、
- 現状の全体像を明らかにすること
- 補助事業で改善したいことについては現状の姿を数字で示すこと
- 何を問題点にするのか明らかにすること
- その原因を明らかにすること
の4つです。
1つずつ解説します。
現状の全体像を明らかにすること
受注から出荷(またはサービス提供)までのプロセス全体について、わかりやすく説明しましょう。フローチャートを使いながら説明するのがオススメです。
例えばこんな感じで。
図だけでなく、各工程でどんなことをやるのか文章で説明するのも忘れずにしましょう。
現状について書くときは、〇〇〇をさりげなく詳しく書いておく
現状について書くときは、補助事業で取り組む予定の改善ポイント周辺のことをさりげなく詳しく書いておきます。
例えば、上のフローチャートの工程2で使っている加工設備を買い換えたいとします。
- 工程2の加工時間を短くしたいなら、現在の加工時間を書いておく
- 工程2の加工品質のばらつきを小さくしたいなら、現在の工程2のばらつきについて書いておく
- 外注委託している工程2を内製化でコストダウンしたいなら、現在の工程2の外注費について書いておく
- 大型部品の加工に取り組みたいなら、現在、工程で対応できる最大サイズについて書いておく
- 新素材の加工に取り組みたいなら、工程2の現在の加工設備で対応可能な素材について書いておく
- 生産能力を高めたいけど工程2がボトルネックになっているなら、現在の工程2の加工能力について書いておく
という感じ。
まだ現状説明の段階なので、何をどう変えたいという記述は不要。あくまでさりげなくです。
ちなみに、可能な限り数値化して説明するほうが、あとで改善前と改善後の比較がしやすいです。
問題点とその原因
言い換えると、やりたいことを実現できない原因は何かということです。
- リードタイムが長い → 原因は手作業で行う作業があり作業時間がかかるから
- 品質がばらつく → 原因は手作業で行う作業があり、作業者のスキル差があるから
- 製造コストが減らない → 外注している工程があり、外注費が高いから
- リードタイムが長い → 外注している工程があり、外注先に半製品を出してから戻ってくるまでに時間がかかるから
- お客様を待たせる時間が長い → 商品の値段をいちいち調べる必要があるから
考え方は上記のとおりですが、今の姿を書くだけなので、それほど難しくないと思います。
なお、1つだけ注意点としては、補助事業に取り組む背景とつながるようにしてください。
例えば、
自社が対応できる納期とお客様の希望する納期が合わないため、商談が流れる。そのために納期短縮に取り組むことにした
ということが補助事業に取り組む背景なら、各工程のリードタイムなど納期に関することを問題としてフォーカスする必要があります。
何を書けばいいのか説明します:「その1:補助事業の具体的取組内容」【事業の具体的な取り組み内容について】
ここからが本番です。補助事業で行う具体的な取組内容について説明します。
(中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針との関係性について)
ものづくりの場合、「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った取組みである必要があります。
参考中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針(PDF)
「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」はボリュームが多くて読むのが大変なので、ポイントだけ以下の記事でまとめています。
-
-
【ものづくり補助金】中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針【まとめ】
ものづくり補助金の公募要領の「審査項目・加点項目」に 「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン ...
わざわざ説明しなくてもいいこともある?
申請書に書いてある取組内容を見れば「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に該当していることが明らか(と自分が思っている)な場合でも関連性を説明したほうがいいのかどうか。
結論は「説明したほうがいい」です(何度も考え直して意見を変えています)。
理由は、
あなたの会社の取組みが「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿ったものであるかどうか判断できない審査員にあたった場合、低評価をうけるリスクがあるから。
(中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドラインとの関係性について)
サービスの場合、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に沿った取組みである必要があります。
参考中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン(PDF)
(達成目標)
要は、「補助事業の成果」です。中長期的な将来の目標のことではありません。
当たり前ですが、目標を達成してはじめて補助金を受け取ることができます。
審査項目の中にも「補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか」としっかり明記されています。目標はしっかり明記しましょう。
現状改善の取組みの場合【キモは数値化】
記述例:
<達成目標>
目標1:○○○を導入し、○○○を○○○する
目標2:○○○により○○○工程のサイクルタイムを○秒以下にする
目標3:○○○により品質のバラつきを無くす
目標4:○○○の導入により、これまで○名で担当していた○○○工程を○名体制とする目標1については、・・・・(以下続く)
技術的課題 ※とても重要
「技術的課題」としていますが、必ずしも「技術的」にとらわれる必要はありません。
ものづくり補助金に限らず、課題が明確になっていない申請書は高確率で不採択になります。
ですので、「技術的課題」は非常に重要な項目です。
「技術的課題」を考える際のポイントは、
- 現状を踏まえていること
- 達成目標(目指す姿)を踏まえていること
- 「現状と目指す姿のギャップ=課題」となっていること
です。
例えば、UV印刷に対応したオフセット印刷機を補助金で購入する場合、下の図のようになります。
※UV印刷については、下記のサイトでわかりやすく解説されています。
この他、課題の考え方として、機械設備を導入したうえで想定しうるリスクを洗い出し、あらかじめ手を打つ課題があります。
ここでも図やイラスト、写真を使って、なるべくわかりやすく記載する必要があります。
記載例:機械を導入したのちに考えうる課題の例
<技術的課題>
○○○加工は、○○○、○○○、○○○などの加工条件によって、強度や見栄えが変わります。
手作業で○○○する場合は、作業者の感覚に頼ることになるので、作業者のスキルによって出来栄えにバラつきが生じますが、○○○機で機械加工する場合は、加工条件を設定すれば基本的には常に同じ出来栄えになり、品質が安定するようになります。
しかし、作業者が○○○機に誤った設定をした場合、その設定で加工したロットは全て不良品となってしまうリスクがあります。
解決方法
ここでは技術的課題の具体的な解決方法を提示します。場合によっては、技術的課題と解決方法をまとめて書いた方が説明の流れが良いこともありますので、そういう場合は技術的課題の中で解決方法まで説明して、「解決方法」の見出しはなくてもよいです。
記載例:機械を導入したのちに考えうる課題に対する解決方法の例
<課題に対する解決方法>
作業者がロット毎に○○○機に加工条件を設定するのではなく、予め加工条件の設定パターンをコンピュータに登録しておき、作業者の設定ミスを未然に防ぐ仕組みにします。
補助事業の具体的な実施内容
ここでは補助事業期間中に実施する内容について記載します。順を追って記載すると良いでしょう。
記載例:
<補助事業の具体的な実施内容>
補助事業の具体的な実施内容として、以下を予定しています。
Step1:○○○の導入・設置
○○○の最終仕様の打合せ、納期や価格の交渉を経て、機器の発注を行います。納入時期として令和○年○月を予定しています。
Step2:検証
実際に製品を加工して、加工品質に問題ないことや、サイクルタイムが○○秒以内になっていることを検証します。うまくいかなかった場合、メーカーのサポートを受けながら、機器の調整を行います。
Step3:加工条件出し及び加工データの作成
○○○加工を自動化するためには、導入した○○○機に○○○、○○○、○○○、○○○だけでなく、○○○、○○○などの加工データを設定する必要があります。当社主要製品について加工データの作成を行います。
スケジュール
補助事業期間中のスケジュールを記載します。取組内容と実施時期を表で表現するとイメージしやすくなります。場合によっては、上記の補助事業の具体的な実施内容のところでスケジュールもまとめて書いてもよいと思います。気を付けるべき点としては、
- それぞれの取組項目をいつ実施するのかわかるように実施時期を明示すること
- 最後の実施項目の実施時期が補助事業期間の完了時期となること
です。仮に補助事業完了期限が、1月だったとしても、下図のように12月までのスケジュールになっている場合は、補助事業の完了期限が12月となる可能性があります。ですので、計画上は補助事業完了期限ぎりぎりまでの計画としておいたほうが安全です。
記載例:
<スケジュール>
交付決定日から事業完了日までのスケジュールとして、次のように想定しています。
取組み内容 |
実施時期 |
|||||
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
Step1:○○○機の導入・設置 | → | → | → | → | ||
Step2:検証 | → | → | → | |||
Step3:加工条件出し及び加工データの作成 | → | → | → |
実施体制
誰が何を実施するという役割分担を明らかにします。場合によっては、経験年数、保有資格など書くことで補助事業を完了まで確実に遂行するノウハウや技術があることをPRするとよいでしょう。ここもスケジュール同様に文章だけで書くより、役割分担表や組織体制図で表現するとわかりやすくなります。
記載例:
<実施体制>
事業全体推進責任者として社長の○○○が担当します。各工程毎の実施内容について、実施すべき内容を明確にして進捗遅れのないように対応していきます。
実施項目 | 役 割 | 担当者名 |
全 体 | 事業推進における意思決定、予算執行、進捗管理等、事業全体に責任をもつ | ○○○ |
○○○機メーカーとの折衝 | メーカー営業・技術担当との仕様ぎめ、価格交渉、導入設置対応等を実施する | ○○○ |
○○○機機導入設置の立ち会い | 納品日に機器の導入設置に立ち会う | ○○○ |
試運転・検収 | 機器の試運転を行い、動作に問題無いことを確認し、検収を行う | ○○○ |
試作 | 品質やサイクルタイムが目標を満足していることを確認するための試作(塗装や仕上げはしない) | ○○○ |
検証 | サンプル品の品質評価を実施する。 | ○○○ |
加工条件出し及び加工データの作成 | サンプル品以外の当社主要製品について、加工データを作成し、○○○機機に登録する | ○○○ |
何を書けばいいのか説明します:「その2:将来の展望」
ここでは、「補助事業の成果をどうビジネスとして立ち上げていくのか」について説明します。
問われていることをざっくり簡単にいうと・・・
- 有望なマーケットなの?
- 勝ち目あるの?
- やれるだけのヒトはいるの?ノウハウは?
- どうやって売るの?
- いくら儲かるの?
- ところで、お金どうするの?
ということです。
本事業が寄与すると想定する具体的なユーザー
まず、目を向けるのは「エンドユーザー」です。
- エンドユーザーは誰か
- エンドユーザーの「ニーズ」
- エンドユーザーの「5つの不」:不満、不安、不足、不便、不快
自社で作っている商品がを直接ユーザーに提供している場合はイメージしやすいのですが、OEM製品を作っていたり、下請け部品を作っている場合のユーザーの書き方が悩ましいようです。
私の考え方としては自社がどういう立場であれ、その最終製品を選ぶのは誰かという観点で考えると良いと考えています。
ユーザー設定例
- カバンを作って、消費者に製造小売りしている場合 → 自社が販売ターゲットとしている購買層
- 化粧品の容器を作って、化粧品メーカーに納入している場合 → 納品先の化粧品メーカーが想定する販売ターゲット層
- オフィス家具を作って、家具メーカーに納入している場合 → 納品先の家具メーカーが想定する販売ターゲット層
- 建築土木資材を作って、国や地方自治体に納入している場合 → 国や地方自治体
- 建築土木資材を作って、ゼネコンに納入しているが、ゼネコンは国や地方自治体から受注している場合 → ゼネコンになるか国や地方自治体になるかケースバイケース
- 半導体製造装置の部品を作って、半導体製造装置メーカーに納入している場合 → 半導体製造装置メーカー
- 加工食品を作って、スーパーマーケットに納入している場合 → 自社が販売ターゲットとしている購買層
文章でイメージがわきにくい場合もありますので、ユーザーがその商品を使っているシーンや設置風景が写った社員など、利用シーンをビジュアル化して読み手がイメージしやすいように工夫しましょう。
市場動向について
ここでは対象市場の動向について説明します。具体的には、
- 市場規模および市場規模の推移(売上高、出荷量、消費量など)
- 季節要因や為替要因など、市場動向に影響を及ぼす外的要因
- 業界シェア
などについて説明すると良いでしょう。ユーザーと市場動向を分けると書きづらい場合は、ユーザーおよび市場動向として一つの項目で説明してもよいと思います。
競争優位性について
ここでは競争優位性について説明します。競争優位性とは、お客様が他社ではなく自社の商品を選ぶ要因のことです。
価格が安いから選ばれるのか、品質が安定しているから選ばれるのか、短納期対応できるから選ばれるのか、選ばれる理由は様々ですが、単に他社と比べて、品質が良いとか納期が短いということだけでなく、どのようにお客様に貢献できるのか具体的な例を紹介できると尚よいと思います。
記載例:印刷会社で短納期対応を実現する場合
当社は商品カタログの印刷を行っていますが、お客様から原稿データを入稿していただいた後に印刷を開始します。
しかしながら、お客様への印刷物の納期をずらせない中、お客様からは原稿データの入稿を期日より遅らせたいという要望をいただくことが少なくありません。
お客様のほうも商品仕様の記載に間違いがないかチェックしたり、写真の差し替えを行ったりとぎりぎりのスケジュールで校正を行うためです。
当社の印刷工程におけるリードタイムを1日短縮することで、当社に発注することで、他の印刷会社に発注する場合と比べて、原稿データの入稿期日を1日伸ばすことができるようなりお客様のスケジュールに余裕が生まれます。
また、商品・サービスそのものにこれといった優位性を見込めない場合、自社の他の強みと組み合わせて競争優位性が生まれることがあります。
記載例:金型設計提案のできる金型製造業の場合
当社の工作機ではこれまで対応できなかった加工ですが、同業他社ではすでに対応できている会社も少なくないのが実情です。
しかしながら、当社にはこれまで培ってきた高い金型設計力があり、例えばお客様に対して、より生産性の高い金型や耐久性の高い金型を提案することができます。
当社のこうした強みを生かすことで、同業他社に対して競争優位性を発揮できるものと考えています。
収益性について
ここでは収益性が高くなることをPRするわけですが、収益性には3通りの考え方があります。
- 売上が向上する場合
- 原価率が下がる場合
- その両方
人によって考え方が異なると思いますが、個人的には収益性が確かに良くなるということを簡単に説明すればよいと考えています。
なぜなら、数値計画とその根拠については、別途、その3:会社全体の事業計画のところで説明するためです。
記載例:作業を自動化できる機械装置を導入した場合
<収益性>
これまで○○○工程を2名で担当していましが、工程を自動化することによって1名で対応することができるようになります(○○○および○○○を担当する○○○工程としては7名体制を6名体制とします)。
手の空いた1名は別の工程を担当してもらいます。その他、繁忙期の長時間残業も減りますで、○○○工程に係る労務費は大幅に削減し、収益性は良くなる見通しです。
ものづくり補助金は平成24年補正からスタートしましたが、当時の申請書は数値計画の欄がありませんでした。そのため、当時、私は向こう3~5年間の売上や利益計画とその根拠を収益性の項目に記載していましたが、今はこの程度の説明にとどめています。
事業化の見込みについて
事業家の見込みというのは、補助事業の成果が売上に結び付くまでの見通しと解釈してよいと思います。ここも3通りの考え方があります。
- 既存の取引先への供給が決まっている場合
- 商品は完成するけど、取引先(販売先)のあてがない場合
- 補助事業を遂行しても商品としては未完成の場合
既存の取引先への供給が決まっている場合
補助事業を完了後にすぐに量産を行い、既存取引先に供給するので、すぐに事業化できます。したがって、特に悩む必要はなく、そのまま書けばよいです。
商品は完成するけど、取引先(販売先)のあてがない場合
販売先を見つける必要があります。どうやって販路開拓していくのか、取引先を見つけるまでのシナリオを説明する必要があります。
販路開拓方法の例:
- 展示会への出展
- マッチング商談会への参加
- ホームページへの掲載(ランディングページの作成など)
- 商社や販売代理店の活用
- 営業社員の採用
業種業態や商品・サービスによって異なると思いますので、自社の置かれた環境にもっとも適した販路開拓方法を選択し、実施方法について説明しましょう。
補助事業を遂行しても商品としては未完成の場合
最近はほとんど見かけないですが、どうやって商品化を実現するか、どうやって販路開拓を行うかについて説明する必要があります。開発面と営業面の両方の観点から説明するのが良いでしょう。
資金調達の目途について
決算書に記載された財務状況によって異なります。
- 資金が潤沢で、自己資金で設備投資を容易に行えることが明らかな場合
- 資金が潤沢とは言えないまでも、借入は容易に行える水準の財務状況である場合
- 運転資金が枯渇、債務超過など、借入が困難に見えるような財務状況である場合
資金が潤沢で、自己資金で設備投資を容易に行えることが明らかな場合
補助事業を遂行するだけの資金を保有しており、全て自己資金で行う旨を書けばよいでしょう。多くを説明する必要もありません。
資金が潤沢とは言えないまでも、借入は容易に行える水準の財務状況である場合
金融機関から借り入れる予定である旨と、金融機関担当者とどこまで話を進めているかなどを記載しつつ、いくらを自己資金で、いくらを借り入れるかなどについて記載すればよいでしょう。
運転資金が枯渇、債務超過など、借入が困難に見えるような財務状況である場合
これが一番やっかいです。採択されても資金難で補助事業を完了できないというのは申請企業だけでなく、補助金事務局側も困るからです。
公募要領の審査項目にも、「事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか。」という文言がありますので、審査に大きく響きます。
もし、本当に金融機関の反応が融資はむつかしく、資金の目途が立っていないのであれば、補助金申請は諦めたほうが良いです。
債務超過でも金融機関から融資可能という反応をいただいているのであれば、その根拠まできちんと示さないと信ぴょう性に乏しくなりますので、詳細に説明を書いたほうがよいです。
第三者からの出資などについても、同様に自社のどういった点を評価して出資に応じてもらえるのかなどを細やかに説明したほうが良いです。あとは審査官が信じてくれることを祈るばかりです。
最後に
とても長文になってしまいましたが、ものづくり補助金の事業計画書の書き方について、いかがでしょうか。何となく書けそうな気になった方もいれば、自分の手に負えないと感じた方もいらっしゃると思います。
最後に採択される事業計画書に必要なこと。それは熱意です。
- 理路整然として筋は通っているけど、説明が淡々としていて熱意を感じられず、どこか第三者的な書き方になっている申請書
- 日本語が変だったり、体裁は悪いけど、一生懸命さが伝わってくる申請書
どっちを応援したいと思うでしょうか。
補助金の審査は書類作成のテクニックを審査するわけではありません。
補助金の審査項目に「熱意」という項目はありませんが、審査員も熱意の感じられる申請書は好意的に見てくれるだろうと私は考えています。
当社は補助金コンサルティングの依頼を承っております。ご興味のある方は、まず 補助金コンサルティングの依頼についてをご覧いただいたうえでお気軽にお問い合わせください(無料相談歓迎です)。
この記事を読んで、自分で申請書を書いている方へ
申請書をブラッシュアップするために以下の記事もあわせてご覧ください。
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