新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっており、産業界に大きな影響を与えています。
人が集まると感染リスクが高まるということで、イベントや会合が相次いで中止となり、ビジネスパーソンの働き方として、在宅勤務が改めて脚光を浴びています。
テレワークを始めるには在宅勤務を行う従業員にパソコンを貸与する必要があり、場合によっては会議システムなどテレワーク用のシステムを導入することもあります。
これからテレワークを始める会社の環境整備に必要な費用を補助してもらえるのが、東京都(窓口は公益財団法人東京しごと財団)が実施している「テレワーク助成金」です。
今回はテレワーク助成金の概要について紹介していきます。
重要
概要
補助対象となる会社
補助対象企業となる対象要件が細かく設定されています。重要そうな要件を抜粋すると、だいたい次のようになっています。
- 常時雇用する労働者の数が999人以下の法人・個人事業主であること。
- 法人は、株式会社などの一般企業の他、医療法人、社会福祉法人などの特殊法人も可
- 都内に本店登記または支店登記されていること(法人都民税を支払っていること)
- 税金の未納付がある企業はNG
- 過去5年間に重大な法令違反を犯した企業はNG
- 暴力団関係、風俗関係の企業はNG
- 就労地域の最低賃金を上回っていること
- 残業代支払いに違反がないこと
- 法定労働時間を超える労働者がいる場合は36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結・順守していること
- 平成31年4月以降、月間100時間、複数月平均80時間を超える時間外・休日労働を行っている従業員がいないこと
- 従業員に有給休暇を年5日以上取得させていること
- 厚生労働大臣の指針に基づいたセクシャルハラスメント等を防止するための措置をとっていること
- 申請企業の代表者が複数の企業の代表者を務めている場合で、他の企業で既にテレワーク助成金を利用・申請していないこと
- 都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加していること
一般的な補助金と異なる点として特に注目したいのが、次の7項目です。
- 医療法人、社会福祉法人などの特殊法人も可
- 就労地域の最低賃金を上回っていること
- 残業代支払いに違反がないこと
- 法定労働時間を超える労働者がいる場合は36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結・順守していること
- 平成31年4月以降、月間100時間、複数月平均80時間を超える時間外・休日労働を行っている従業員がいないこと
- 従業員に有給休暇を年5日以上取得させていること
- 厚生労働大臣の指針に基づいたセクシャルハラスメント等を防止するための措置をとっていること
- 都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加していること
一言でいうと、
非常に幅広い企業が補助対象となるいっぽうで、最低レベルの労働条件をクリアしていないブラック企業は対象外。 |
という感じですね。
あと、「2020TDM推進プロジェクト」に参加していることが申請条件に入っている点も注意が必要です。
助成対象経費
はじめに助成対象経費からみていきましょう。募集要項のP11に示されている対象機器が下の表です。
ここに掲載されているのはあくまで例ですので、テレワークのインフラ構築に必要な機器・システムで、この表に載っていない経費については、事務局に確認するとよいでしょう。
ここで注目すべき点は、パソコン、タブレット、スマートフォンが補助対象になることでしょう(通常、パソコン、タブレット、スマートフォンは、補助対象外経費となります)。ほとんどの会社がパソコンの購入費用の助成を目的にするものと思われます。
対象外経費
いっぽう次のようなケースは助成対象外となります(募集要項のP12より転記)
- 助成対象経費(別表1)に記載のないもの
- 助成事業に関係のないもの(物品の購入、業務委託等)
- 使途、単価、規模等の確認が不可能なもの
- この助成金以外の他の事業に要した経費と明確に区分できないもの
- 支給決定日より前に開始した事業に係るもの。ただし、支給決定日より前に開始した事業であっても、その一部が、内容や経費等の面から明確に支給決定日以前の部分と区別できる場合には対象とします。
- 支給申請時に事業が完了しているもの
- 間接経費(消費税・振込手数料・収入印紙代・事務手数料等)・旅費・光熱水費・物品購入に係る送料
- 通信費(携帯電話通話料金、Wifi 月額料金、インターネット回線・プロバイダー料金等)
- 自社の売り上げとなる助成事業
- 親会社、子会社、グループ企業等関連会社(資本関係のある会社、役員を兼任している会社、代表者の親族(3親等以内)が経営する会社等)、代表者の親族との取引であるもの
- 他団体からの寄付・助成など、自己負担していない分の経費
- 実績報告時までに完了していない事業に係るもの。ただし、実績報告時以後も続く事業であっても、内容や経費等の面から明確に実績報告時以後の部分と区分できる場合には対象とします。
- 物品購入時、店舗発行のポイントカード等によるポイントやクレジットカードのポイントを取得した場合の現金換算可能なポイント分
- 現金で支払われたもの(10万円以下で即時支払いが求められるものを除く)。
- 契約書、発注書、納品書、領収書、振込明細書等の帳票類が不備なもの
- 名義が助成対象事業者以外の領収書、振込明細書等
- 他社発行の手形や小切手、個人名義のクレジットカード等により支払いが行われている経費
- 通常業務・取引と混在して支払いが行われているもの
- 他の取引と相殺して支払いが行われているもの
- その他、 同一の事由で国、都または区市町村等から給付金や助成金を受けている場合
- 上記各号のほか、社会通念上、助成が適当でないと財団が判断したもの
他の補助金と同じく、支給決定を受ける日より前に使った経費は補助対象外です。
つまり、先にテレワーク用のパソコンを買って、あとから申請しても助成金は受けられません。補助金を使ったことがない企業がよく間違えるポイントなので注意してください。
また、パソコンを購入するケースが多いと思いますが、パソコンはだいたい5万円~30万円の価格帯ですので、会社によっては量販店に買いにいったり、ネット通販で買う場合もありえます。
従業員が個人のクレジットカードでいったん立て替えて、あとで会社と経費精算することもありえると思います。こうした場合は、一部または全部が助成対象外となる可能性がありますので、くれぐれも注意してください。
ありがちな失敗として以下のようなケースが考えられます。
- 量販店(ヨドバシカメラなど)でポイント付与を受けたのでポイント分の清算が煩雑になった
- 店頭で10万円以上のパソコンを現金購入した
- 店頭で購入したので領収書以外に必要な帳票が存在しない
- 社長や社員が個人名義のクレジットカードで立て替えた
その他、以下に該当する場合も助成対象外となるようです。
単価1,000円以下の消耗品は対象外とのこと、あと中古品もNGです。
気になる助成率は?
上限額は250万円、補助率は100%です。一般的に補助金の補助率は、1/3、1/2、2/3というのがほとんどですので、破格の数値です。
スケジュール
申請受付期間:令和2年3月6日 ~ 令和2年5月12日(必着)
助成対象期間:支給決定日 ~ 令和2年6月30日
提出方法
郵送による提出
(郵送先)
公益財団法人東京しごと財団 雇用環境整備課 職場環境整備担当係 〒101-0065 東京都千代田区西神田3-2-1 住友不動産千代田ファーストビル南館5階 |
提出書類
テレワーク助成金の申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 事業計画書 兼 支給申請書(様式第1-1号)
- 事業所一覧(様式第1-1号別紙)
- 内定通知書テレワークを活用した事業継続及び従業員の安全確保にかかる計画(様式第1-2号)
- 誓約書(様式第2号)
- 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用) ※労働者2名分
- 就業規則一式(労働基準監督署の届出印のあるもの)
- 会社案内または会社概要(ホームページの写しなど)
- 商業・法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 印鑑登録証明書
- 法人都民税・法人事業税の納税証明書(直近のもの)
- 「2020TDM 推進プロジェクト」ホームページの申請者の名称が掲載されているページを印刷したもの
- テレワーク環境構築図(導入前・導入後)
- 見積書相見積書(1社あたりの購入金額が30万円以上の場合)
- 導入製品等の資料(製品情報および作業内容)
就業規則について
従業員数が10人未満の会社の場合、就業規則を提出する必要がありません。
ただし、テレワーク規定については新たに作成・提出する必要があります(申請時点では不要、完了時までに作ればよい)
就業規則に労働基準監督署の届出印がない
常時雇用する労働者が10人以上の企業は就業規則を作成して労働基準監督署に届け出を行う義務があります。しかしながら、実態としては10人以上であっても就業規則の届出を行っていないケースは珍しくありません。
(届け出を忘れてしまうケース)
初めて親族以外の従業員を雇用した際に就業規則を作成したが、従業員は10人未満だったので届け出は行わなかった。会社の事業拡大に伴い従業員数が10人になったが、就業規則はそのままになってしまっていた。 |
ポイント
就業規則の届け出を失念していた方はテレワーク助成金の申請前に労働基準監督署に届け出を行いましょう。
様式第1-1、誓約書のここに注意!
何気なく、普段通りに会社の所在地を記入すると、こう言われることがあります。
「会社の所在地が違います」
所在地の欄には通常使っている所在地(例えば、名刺に記載している会社所在地など)を記入しがちですが、この所在地の欄には、登記簿謄本の記された所在地を記載しないと書類不備となります。
登記簿謄本に記載されている所在地:東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号
様式第1-1/誓約書に記載する所在地(〇):東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号
様式第1-1/誓約書に記載する所在地(×):東京都〇〇区〇〇町〇ー〇ー〇
ココがポイント
- 申請書に書く企業等の所在地は、登記簿謄本に記されている本店(または支店)の所在地と一致させること
- 誓約書に書く企業等の所在地も、登記簿謄本に記されている本店(または支店)の所在地と一致させること
納税証明書って税務署でもらえばよいの?
テレワーク助成金で必要となる納税証明書は都税事務所で発行されるものになります。法人都民税と法人事業税の両方に滞納がないこと証明する必要があります。日本政策金融公庫などから融資を受ける際に納税証明書を求められますが、こちらは国税ですので最寄りの税務署ということになります。うっかり融資のときに必要な納税証明書と同じものだと勘違いしないよう注意しましょう。
雇用保険被保険者資格取得等確認通知書が見当たらない!
これは6か月以上にわたり雇用保険に加入している従業員が2名以上いること(助成要件になっている)を証明するものです。従業員を雇用保険に加入させた際にハローワークから送られてくるものです。社内に保管されているはずですので探しましょう。
「2020TDM 推進プロジェクト」への参加に関する資料ってどこでもらうの?
2020TDM推進プロジェクト公式ページから申請できます。WEB上から簡単に申請できるようです。申請後に「認証確認メール」が配信されるので「認証確認メール」をプリントしたものを添付すればよいみたいです。
見積書および相見積書について
テレワーク助成金は、申請時点で見積書の提出が必須になります。
以下に注意点をまとめました。
- ホームページの価格表のみはNG
- 社判または担当者印のない見積書はNG
- 申請日時点で見積り有効期限を過ぎている見積書はNG
- 相見積書も書き方は見積書と同じ
見積書に記載すべき経費
助成対象経費として申請する経費は全て見積書に記載する必要があります。機器はもちろんのこと初期設定費用なども全てです。
具体的には、様式第1-1号経費内訳書に記載のある項目(導入機器・機器設定費等の作業内容等)の内容が見積書に記載されている内容と一致している必要があります。
業者に見積もりを依頼する際の注意点
社名を正しく記載してもらうといったことは当然として、補助金・助成金用に見積書を作るのに慣れていない業者がやりがちな注意点をあげてみました。
- 品名にはメーカー名、品名、型番を正しく記載してもらうこと
- 単価と台数を明記してもらうこと(複数の機器をまとめて一式表記はNG)
- 品目ごとに備考欄に用途を記載してもらうのが無難(メーカー名、品名、型番だけで何の経費なのかわからないケースがあり得るため)
- 商品単価が税込みで1,000円以上、10万円未満になっていること(税抜き価格ではないので注意)
- 見積もり業者の社印(角印でOK)と担当者印を押してもらうこと(要項ではどちらかでOK)
- 申請書の提出予定日を伝え、見積もり有効期限内になるように見積有効期限を設定してもらうこと(余裕を持たせるのが望ましい)
- 「配送料を含む」「事務手数料を含む」「通信費を含む」など、本来の商品の価格が見えなくなるようなコミコミ価格の表記はしないようにお願いすること
- 機能、性能などがわかるカタログや仕様書を品目ごとに添付してもらうこと(初期設定作業などについては細かい作業内容がわかる作業仕様書)
品名にはメーカー名、品名、型番を正しく記載してもらうこと
購入した機器と申請した機器が同じものかどうかを確認するために必要な情報です。
品目:NEC製 ノートパソコン LAVIE Home Mobile 型番:PC-GN18CSA1G
という形で書いてもらえば、まず問題ないでしょう。
単価と台数を明記してもらうこと
例えば、単価3000円のマウスを10個見積もる際に、
品名 〇〇製 マウス 〇〇〇 型番:〇〇〇 10個
単価 30,000円
個数 一式
という書き方はマズイということです。テレワーク助成金は、単価1,000円(税込)~10万円(税込)という制約がありますので、単価についてはシビアにみられます。
委託作業についても同様に単価×数量で表記したほうが安全です。
例えば、PCを10台購入し、全てのPCについて初期設定を委託する場合、
品名 PC初期設定作業
単価 20,000円
数量 一式
ではなく、
品名 PC初期設定作業
単価 2,000円
数量 10式
のように表記するのが安全です。
品目ごとに備考欄に用途を記載してもらうのが無難
品目にメーカー名、品名、型番が記載されていたとしても、それがどんな製品なのか、何に使うものなのかがわかりにくい場合があります。
例えば、
品名:エレコム製 HDMIケーブル DH-HDP14ES10BK
と記載されていても、「このケーブルは何に使うのだろう?」と思われるかもしれませんが、備考欄に「パソコンとモニターの接続用」と記載されていれば、テレワーク環境の構築に必要なものだと容易に理解できます。必須ではないかもしれませんが、備考欄に用途を記載しておいてもらうことをおすすめします。
商品単価が税込みで1,000円以上、10万円未満になっていること
テレワーク助成金では、助成対象経費にできるのは、税込み価格で単価1,000円以上、10万円未満の機器という条件があります。
税抜き価格ではなく、税込み価格です。
10万円以下ではなく、10万円未満です。
10万円未満でないと助成対象外になってしまうと理解していたので、業者に10万円未満にしてくれと値切った結果、税抜価格で単価95,000円になっていると税込価格で10万円を超えてしまうので助成対象外となります。
価格交渉時に言葉のアヤで「助成対象にするために税抜10万円以下にしてくれ」と値切った結果、税込価格でジャスト10万円になっていると10万円未満に該当しないので助成対象外となります。
見積もり業者の社印(角印でOK)と担当者印を押してもらうこと
補助金・助成金はまだまだハンコ社会です。ですので、見積書にハンコは必須です。
最近はPDFの見積書をメール送付という業者も増え、PDFに赤で電子印鑑を押してあることも少なくありません。
見積書の提出は原本ではなく、コピーでいいので電子印鑑でも大丈夫なような気がしますが、私が支援した案件については念のため本物の印鑑を押したものをコピーして提出してもらうようにしています。
電子印鑑で提出したい場合は事前に事務所に問合せしたほうがいいですね。
申請書の提出予定日を伝え、見積もり有効期限内になるように見積有効期限を設定してもらうこと
一般的に見積もり有効期限は契約日が有効期間内にあることを求められるのですが、テレワーク助成金の場合は申請予定日が有効期限内であればいいようです。見積もり書を取ってからモタモタしているうちに有効期限を過ぎてしまうことがないように、できれば、申請予定日の1か月先くらいまで有効期限を設定してもらうのが理想ですね。
「配送料を含む」「事務手数料を含む」「通信費を含む」など、本来の商品の価格が見えなくなるようなコミコミ価格の表記はしないようにお願いすること
雑な見積書を書く業者だと、括弧書きや但し書きで「送料を含む」とか「初期設定費を含む」とかコミコミ価格表記で書いてくるケースがあります。
パソコンの単価が90,000円(本当は本体価格88,000円、送料2,000円)だとして、
ノートパソコン(送料含む) 90,000円
という表記がなされていた場合、「補助対象外の送料は90,000円のうちいくらになるの?」ということになってしまいます。
補助金・助成金は税金が投入される事業なので、その辺のルールは厳しいです。
機能、性能などがわかるカタログや仕様書を品目ごとに添付してもらうこと
パソコン本体のカタログは商談時に渡されることは多いと思いますが、周辺機器についてはカタログや仕様書を用意していない業者が多いと思います。
メーカーがカタログを用意していなくても、情報機器は製品の箱に仕様が書かれていることも多いので、箱に記載された製品仕様の部分をカメラで撮影してプリントアウトするとかでもいいと思います。
相見積書はどうすればいいか
テレワーク助成金では、購入先1社あたりの購入金額が税込30 万円以上の場合に相見積書が必要になります。
購入機器の単価が30万円以上ではなく、購入機器の単価が30万円以下でも同じ会社からの購入金額の合計額が30万円を超える場合に相見積書が必要になります。
税抜30万円以上ではなく、税込30万円以上の場合に相見積書が必要になります。
相見積書の作り方は見積書と同じです。
内訳の書き方が見積書と相見積書で異なると比較が難しくなるので、内訳の書き方は見積書と相見積書で統一しておくことをおすすめします。
もし、見積書を依頼した2つの業者で、同一メーカー・同一モデルの製品の見積もりを用意できない場合は、同等製品とすればいいようです。