補助金申請において、良い事業計画なのに何故か採択されないことがあります。
そんなときは、会社の財務状況に問題があるかもしれません。具体的には「債務超過」です。
今回は債務超過と補助金の採択・不採択のメカニズムについて解説します。
中小企業診断士として独立し、
初めて支援した補助金申請は、ある業界向けに特化したLED照明の開発でした。
補助金コンサル歴10年になります。
これまでの採択件数は120件以上、採択率は「80%~90%」です(過去の採択実績はこちら)
Twitter(@KeisukeMatsumo7)
債務超過とは
一言でいうと、会社の財務状況が、
資産<負債
の状態にあるとき、「債務超過」といいます。
会社が債務超過にあるかどうかは、決算書を見ればわかります。下図の赤枠の部分がマイナスなら債務超過です(通常はプラスのはず)
債務超過企業が採択されにくい理由
ほとんどの補助金が、審査項目に財務状況に関する評価項目を設定しています。
財務状況のチェックポイントとして古くから言われているのが、
- 債務超過
- 2期連続赤字
です(審査項目に明記されている補助金もあれば、そうでない補助金もあります)
これらは銀行借入の審査でも重視されるポイントですが、今回は債務超過に絞って説明します。
まず債務超過にある企業を採択した場合、
- 銀行からの借入に失敗して、補助事業がとん挫するのではないか
- 近い将来、倒産するのではないか
ということが懸念されます。
補助金は基本的に後払いです。つまり、いったん全ての経費を自分で捻出する必要があります。
債務超過の会社を採択しても、銀行からの借入に失敗して、補助事業に必要な経費を捻出できず、補助事業が頓挫する可能性が高いと判断されます。
また補助金を受けて新しい事業をスタートしたとしても、ランニングコストが発生しつづけます。
計画通りに事業が進捗しなかった場合、運転資金を銀行に頼らざるを得ない場面も想定されますが、債務超過だと借入ができず、資金繰りに行き詰って倒産する可能性が高いと判断されます。
これが債務超過企業が採択されにくい理由です。
正直いって、債務超過の会社が採択を受けるのはかなり厳しいと思います。
債務超過だけど債務超過でない場合もある
たまに、表面上は債務超過だけど、債務超過ではないという会社に遭遇することがあります。
それは、
- 昔から持っている土地や保有している金融資産に含み益があるのに簿価会計されている
- 債務の大部分が経営者による貸付金である
という場合です。
もし、これらに該当する場合は、
「表面上は債務超過であるが、土地・金融資産を簿価会計しており、これを時価会計で評価すると実質債務超過でない」
「表面上は債務超過であるが、負債のうち○○万円が経営者による役員貸付であり、これを資産として評価すると実質債務超過でない」
と書いてあるだけで審査員の心証が変わります。
債務超過企業が採択率をアップさせるコツ
事業計画に資金調達の見通しについて何も書かないというのは、負け戦にいくようなものです。
かといって、
「本事業に必要な資金については、〇〇銀行に前向きな回答を頂いています。」
だけでは心もとないです。
マヌケな審査員に当たれば信じてもらえるかもですが、マトモな審査員にはすぐ見抜かれます。なぜなら、債務超過の会社に新規融資を行う可能性はとても低いから。
だから、納得感のある説明で、資金調達や事業継続に問題がないことを理解してもらう必要があります。
それでは対策を説明します。
まとめ
債務超過で補助金申請するのは、敗色濃厚な戦いに挑むようなものです。
ここで紹介したテクニックは、債務超過という致命傷をいかに軽傷にとどめるかという守りのテクニックです。
当たり前ですが、取り繕うにも限界があります。
そもそも、うまく取り繕って、運よく採択されたとしても、結局資金調達できずに頓挫する企業をたくさん見てきました。
資金調達の見通しが立っていないなら、債務超過を解消できるまで補助金申請は諦めるほうがいいと思います。