【ものづくり補助金】事業計画書(5か年の数値計画)の書き方について解説します。~とりあえず編~

こんにちは。

 

相談者
ものづくり補助金に申請しようと思っているが、数値計画を書いたことがない。どうやって書けばいいの

 

今回はこんな悩みに答えます。

本記事は「令和元年度補正ものづくり補助金4次締切」の公募要領に準じています。

 

記事の信頼性

中小企業診断士として中小企業の経営コンサルティングを生業としています。

補助金獲得のコンサル歴は12年。

これまでの採択件数は80件以上、採択率は「80%~90%」です。

過去の採択実績はコチラ に掲載しています。

 

 

 

ものづくり補助金に登場する5か年の数値計画とは

ものづくり補助金に申請するためには3~5年間の数値計画を作成する必要があります。

ExcelやWordのファイルを添付するのではなく、以下のような電子申請画面に数値を直接入力しなくてはいけないのでちょっと面倒です。

 

ものづくり補助金5か年数値計画のポイント

  • 補助事業も含めた会社全体の数値計画(補助事業だけの数値計画ではない)
  • 計画期間は3~5年(通常5年で書く)
  • 付加価値額の伸び率が年平均3%増(5年で15%増)となる計画にする必要がある
  • 給与支給総額の伸び率が年平均1.5%増(5年で7.8%増)となる計画にする必要がある

 

入力すべき数値項目

下記の数値項目について5年分の入力を行います。ただし、設備投資額だけは1年後の1回だけ記入します。

  • 売上高
  • 営業利益
  • 営業外費用
  • 人件費
  • 減価償却費
  • 給与支給総額
  • 設備投資額(1年後にのみ記載)

経常利益、付加価値額、付加価値額伸び率、給与支給総額の伸び率は自動計算されるので入力不要です。

Excelで下書きをしよう

下書き無しでいきなり入力フォームに数値を入力するのはやや無謀かも。事前に机上計算して方がやり直しが少なくて済みます。

おすすめはExcelを使って計画数値をシミュレーションすることです。

 

次に各入力項目について解説します。

 

基準年度は過去の決算書を参照して入力する

数値計画のフォームに入力するのは6年分です(5年計画の場合)。

1番左端の列は「基準年度」として前期決算の数値を入力します。2列目から右は計画部分で将来の数値計画を入力します。

まずは基準年度の入力の仕方をみていきましょう。

 

①売上高

直近の決算書(損益計算書)の売上高に記載されている数値を入力します。

 

②営業利益

直近の決算書(損益計算書)の営業利益(営業損失)に記載されている数値を入力します。

 

③営業外費用

直近の決算書(損益計算書)の営業外費用に記載されている数値を入力します。

営業外利益は無視します。

 

④人件費

製造原価報告書を作成している会社と作成していない会社で計算方法が異なります。

一般論になりますが

製造原価報告書を作成している会社:製造業、建設業など
→ 販管費の人件費と製造原価の人件費の合計が会社全体の人件費

 

製造原価報告書を作成していない会社:小売業、卸売業、サービス業、飲食業など
→ 販管費の人件費が会社全体の人件費

となります。

なお、製造原価報告書を作成しているかどうかは、自分の会社の決算書を見るとわかります。

 

(人件費の計算方法)

直近の決算書から下記の数値を合計します。

販売費及び一般管理費の計算内訳から

  • 役員報酬
  • 給与
  • 雑給
  • 賞与
  • 退職金
  • 法定福利費
  • 福利厚生費(厚生費)

これらを合計したものが販管費の人件費となります。

 

製造原価報告書から

  • 労務費(賃金、法定福利費などの合計)

賃金や法定福利費などの合計金額が労務費として記載されていますので、労務費をそのまま製造原価の人件費とします。

 

⑤減価償却費

人件費と同様に製造原価報告書を作成している会社と作成していない会社で計算方法が異なります。

製造原価報告書を作成している会社 → 販管費の減価償却費 + 製造原価の減価償却費

 

製造原価報告書を作成していない会社 → 販管費の減価償却費

となります。

 

⑥設備投資額

基準年度

基準年度の設備投資額については0円と入力しておけばよいです。

1年後

1年後の設備投資額については、補助事業で使う金額を入力します。

例えば、1500万円(税抜)の機械装置を購入する場合は、15,000,000円と入力します。

 

⑦給与支給総額

決算書をいくら見ても「給与支給総額」という勘定科目はありません。

決算書から、給与に相当する科目だけをピックアップして合計したものが「給与支給総額」となります。

決算書の中で見るべき書類は、

  • 販売費及び一般管理費の計算内訳
  • 製造原価報告書(作成している場合のみ)

です。

販売費及び一般管理費の計算内訳に記載されている給与

下記の項目を合計したものが販管費側の給与支給額となります。

  • 役員報酬
  • 給与
  • 雑給
  • 賞与

退職金は給与支給総額に含まれません。

製造原価報告書に記載されている給与

以下の項目を合計したものが製造原価側の給与支給額となります。

  • 賃金
  • 雑給
  • 賞与

退職金は給与支給総額に含まれません。

 

ものづくり補助金の場合、1年後~5年後までの数値計画はこう考える

事業計画部分(1年後~5年後)の数値は自分で数値を考えなければなりません。

 

①売上高

もっとも多くの方が悩む項目です。売上計画の立て方は人それぞれですが、過去の経験上、方法1か方法2で立てる方が多いようです。

売上計画の立て方

  • 方法1:毎年〇%ずつ売上高を成長させていく
  • 方法2:毎年〇〇万円ずつ売上高を成長させていく
  • 方法3:5年後に〇〇万円を目標設定して、1~4年目を中間目標として案分する

数値計画については「その3:事業計画の算出根拠」で売上計画の根拠について説明する必要があります。したがって、それなりの根拠をもった数値を入力する必要があります。

 

どこまで丁寧に根拠を説明する必要があるのか?

次のような数値計画の立て方で採択されている会社をたくさん目にしています(案外、売上の根拠を重要視していない審査員が多いのかもしれません)

売上計画の立て方:毎年10%ずつ売上高を成長させていく(方法1)

売上計画の根拠:

得意先に新商品をPRするなど営業活動を強化することにより、毎年10%ずつの売上成長を見込んでいる。

 

②営業利益

簡易的に営業利益の数値計画を立てるなら、以下の考え方で営業利益を計算してみましょう。

  • 基準年度の売上高対営業利益率(営業利益÷売上高)を1~5年に適用し、それぞれの年度で売上高×営業利益率で計算する
  • コストダウンに取り組むことを前提に営業利益率を基準年度から徐々に改善させていく

本来、営業利益は売上原価や販管費を見極めないと立てられないはずですが、なぜか売上原価や販管費については問われていません。

真面目に利益計画を立てるなら、今後5年間の取組みによって製造原価や販管費がどのように変わっていくのかをちゃんとシミュレーションしてみましょう。

 

③営業外費用

ほとんどの中小企業にとって、借入金に対する支払利息が営業外費用の大部分を占めます。

したがって、「営業外費用=支払利息」という前提で考えてOKです。

簡易的にいくなら方法1で、まじめにいくなら方法2で計算しましょう。どちらの方法でも審査にはあまり影響してこないと思います。

方法1:基準年度の営業外費用を1~5年に適用する(借入金の返済を考慮しない場合)

方法2:基準年度の営業外費用を一定割合で減らしていく(借入金の返済を考慮する場合)

 

④人件費

「人件費=給与支給総額+法定福利費+福利厚生費+その他(退職金など)」と考えます。

「法定福利費=社会保険料」ですが、社会保険料は給与(社会保険的には標準報酬月額)の30~32%を会社と従業員で折半する仕組みです。すなわち、給与支給総額の約16%を会社が負担する社会保険料(すなわり法定福利費)として考えて差し支えありません。

したがって、以下の方法が人件費を計算する簡易的かつおすすめの方法です。

それぞれの年度の⑦給与支給総額を16%増加させた金額を設定する(⑦給与支給総額×1.16)。

 

⑤減価償却費

ポイントは、

減価償却費=減価償却の終わっていない既存設備の減価償却費+補助事業で購入する新設備の減価償却費

です。

あとは方法1~3のどの方法でも審査上は大差ないと思います。「その3:事業計画の算出根拠」でどうやって数値を算出したのかが示されていれば問題なしです。

  • 方法1:会計知識を持った経理担当者か顧問税理士に確認する
  • 方法2:定率法20%で簡易的に計算する
  • 方法3:減価償却費計算サイトで計算する

 

⑥設備投資額

補助事業を実施するうえで発生する設備投資額を入力します。

補助事業で行う設備投資額(税抜)を入力する

通常は補助対象経費とイコールになるはずです。

ただし、補助対象外の経費(例えば補助事業を実施するために必要になる自動車の購入費など)がある場合は、

設備投資額=補助対象経費+補助対象外の経費

としましょう。

 

⑦給与支給総額

給与支給総額の伸び率が年平均1.5%増(5年で7.8%増)とする必要があります。

給与支給総額は必ずしも賃上げとは限らない

従業員を新規採用すれば賃上げがなかったとしても給与支給総額はアップします。

計画期間中に従業員数を新規採用する場合

方法2:採用予定年度に新規採用者の年収分を加算する

 

従業員数を変えない場合

方法1:基準年度の給与支給総額を1.5%増した金額(基準年度の給与支給総額×1.015)を入力する

 

こんなときどうする?「付加価値額が年平均3%増にならない」

まずは付加価値額の計算方法をおさらいしておきます。

付加価値額=②営業利益+④人件費+⑤減価償却費

 

付加価値額は、

  • ②営業利益を増やす
  • ④人件費を増やす
  • ⑤減価償却費を増やす

で増えますが、まずは「②営業利益を増やす」で調整しましょう。

 

営業利益だけを増やすと売上高対営業利益率が高くなって不自然に見える可能性があります。

したがって、とりあえず付加価値額3%増としたいなら、

  • ②営業利益を増やす
  • 営業利益が不自然にならないように①売上高を増やす
  • ①売上高が大きくしても納得感の得られる根拠を考える

で対応可能です。

 

おわりに

今回は「とりあえず数値計画をカタチにしたい」という方むけの解説記事です。

数値計画はもう少し違ったアプローチでたてることが多いです。

補助金のための数値計画ではなくて、会社のための数値計画にもチャレンジしてみましょう。