新型コロナ感染症のワクチンや治療薬が確立されておらず、第2波、第3波を警戒しながら社会生活を営んでいくという状況が当面続きそうな中で、ビジネスのあり方が大きく転換する局面を迎えています。
こうしたビジネス環境の変化を踏まえ、国の支援(補助金)にも「特別枠」が設けられ、「特別枠」に該当する補助事業については、補助上限額や補助率の引上げなど優遇措置が取られることになりました。
特別枠の要件
補助対象経費の1/6以上が、以下の要件のいずれかに合致する投資であること
- A類型:サプライチェーンの毀損への対応
- B類型:非対面型ビジネスモデルへの転換
- C類型:テレワーク環境の整備
特別枠の優遇措置
- ものづくり補助金:補助率を1/2から2/3に引き上げ
- 持続化補助金(コロナ特別対応型):補助上限額を50万円から100万円に引上げ B類型、C類型については補助率を2/3から3/4に引上げ
- IT導入補助金:補助率を1/2から2/3に引上げ。B類型、C類型については補助率を2/3から3/4に引上げ。PC等のハードウェアレンタルも補助対象
A類型は、内製化や増産対応といった取組みをイメージしており、主に製造業向きの要件ですね。生産設備を補助対象経費として申請するケースが多いと予想されます。補助上限額が大きい「ものづくり補助金」での申請が多そうです。
B類型は、守備範囲が広いですね。販売、サービス提供、営業など、B2B、B2C問わず広い場面で該当しそうです。取組内容によって「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」「IT導入補助金」のどの補助金でも使い勝手がよさそうです。
C類型は、ビジネスの現場では今一番ホットなキーワードの1つかもしれませんね。B2B、B2C問いませんが、オフィスワークが主な対象になりそうです。パソコンやタブレット端末を補助対象経費として含めることができるIT導入補助金での申請が多そうです(ただし購入はダメでレンタルに限られますが)
本記事では、申請ニーズの高そうなB類型の「非対面型ビジネスモデルへの転換」について考察してみました。
この記事はこんな方におすすめです
- 非対面ビジネスモデルへの転換を目指している方
- 補助金の「特別枠」での申請を検討している方
非対面型ビジネスモデルとは
特別枠の要件上は、
「ビジネスシーンにおける人と人の接触機会を減らす、
またはゼロにするような仕組みを作る」
ということになります。
ですが、私は、
「新しい価値を生み出す仕組み」
でもあるべきだと考えています。
一般的なビジネスの流れの確認
1つのビジネスの始まりから終わりまでにどんなイベントがあるのか、その流れを確認します。業種・業態によって、アフターサービスがなかったり、代金前払いだったりとありますが、一般的な流れはこんな感じでしょう。
非対面化できるポイントを考える
商談・接客
来店しない商談・接客
90%以上の方がホームページ上での商品説明やECサイトの開設を思い浮かべるでしょう。ただし、単にホームページやECサイトを作れば売れる時代ではありません。近所にあって対面型だからお店に来ていた人も、ネットであれば物理的距離は関係なくなりますし、非対面なら別のサイトから商品やサービスを購入するというお客様は少なくないと思ったほうがいいです。あと既存顧客ではなく新規顧客をネットで集めたいということであれば、星の数ほどある既存のECサイトとの競争になりますので、相応の労力とコストは覚悟しておく必要があります。
商品やサービスの使用感については今は動画を併用するのが当たり前の時代になったので、動画を使った商品説明を入れておきたいですね。
いっぽう、商品の仕様について細かい確認が必要なもの、お客様の好み、要望、心配事などを聞きながら、お客様に最適な商品を提案していくようなものなどについては、オンラインミーティングのような形で商談を行う形態は、これから増えていくと思います。これはBtoBの法人営業なども同様ですね。
もちろん、何が何でもECサイト化する必要はありません。チラシを配布して、電話で問い合わせをもらうという方法も立派な非対面型への転換です。
来店したうえで非対面に取り組む
店内に設置したタブレット端末などを操作してもらって、商品やサービス内容に関する情報を提供するという方法も考えられます。飲食業界(居酒屋チェーン、ラーメン屋、回転寿司屋など)では割と進んでますね。
コンピュータを使って疑似的に商品・サービスを確認できるものもいいと思います。不動産屋に行って賃貸物件を見るのに従来はスタッフと一緒に現地に内覧に行きますが、ライブカメラで映像を見れるとか、商品のイメージをVR(バーチャルリアリティ)で確認できるとかです。まあ、コロナによる影響の有無に関わらず、今までもその流れはありましたね。
取り組み例
- WEBサイト・ECサイトの構築
- 商品・サービスの説明動画の制作
- 商品・サービスを疑似体験できるVRコンテンツの制作
- 商品を作っている様子、サービスが提供されている様子などを確認できるライブカメラ映像の視聴システムの構築
- 無人受付機、オーダー端末等の導入
- オンライン商談システムの構築
注文・契約
注文・契約の非対面化として、考えられる非対面化は、券売機やオーダーシステムですね。もちろん、ECサイトを立ち上げる場合もWEBから注文することになるので非対面化と言えます。
商品・サービスの提供
マッサージ店など、物理的な接触を伴う対人サービスの非対面化は難しいですね。ピアノ・英語・運動などのレッスンなどの対人サービスはオンラインレッスンといった形が考えられます。既にいろんな分野でオンラインレッスンを行う会社が登場していますよね。ただし、オンラインレッスンはお客とお店で双方向コミュニケーションできないと、DVDレッスンビデオやYoutubeのレッスン動画と変わらなくなってしまうので、双方向コミュニケーションによるオンラインレッスンが基本路線になると思います。
また飲食店がテイクアウトサービスを始めるのも非対面化と言えそうです。
支払い
店頭販売の場合は、商品を手にとってレジへもっていくような販売形態の場合は多くのスーパーマーケットで取り入れられているような無人レジの導入が非対面化につながりそうです。ECサイトなどについては、そのままオンライン決済になるのでECサイト構築に取り組む時点で支払いについても非対面型に転換したと言えるでしょう。
また、補助事業の要件的には、現金支払いをキャッシュレス化するだけでも非対面型への転換としてみなしてもらえるようです。
結論
せっかく非対面型ビジネスモデルに転換するのであれば、感染予防効果と合わせて売上アップも期待できる方法が望ましいと考えています。
商談・接客のIT化によって、対面型で商談・接客していた時よりも「便利!・手軽!・商品のことがもっとよくわかる!」ということをお客様に感じていただけることに取り組みたいですね。
一番おすすめしたい方法は、商品説明から決済まで遠隔で完結するECサイトの構築でしょう。ECサイトを立ち上げるまでは比較的容易ですし、対応してくれるWEB制作業者もたくさんいるので取り組みやすいです。ECサイトは、24時間、世界中どこにいるお客様にも売ってくれる優秀な営業マンです。ただし、ECサイトでモノが売れるかどうかは、こまめなサイト更新やネット広告への出稿など、ECサイト運営にどこまで力を入れるかにかかってくるので要注意です。
二番目におすすめしたい方法は、オンライン商談システムです。商品やサービスの仕様を細かく確認したい場合やお客様の好みや要望、心配事を聞いたうえで最適な商品・サービスを選んであげたい場合に有効です。電話としがって画面越しに商品を見せたりすることも可能ですし、ジュエリーやアクセサリーであれば実際にスタッフが身に着けてあげることも可能です。不動産であればオンライン商談システムでお客様と話しながら、入居物件の部屋に取り付けたライブカメラで部屋の中を案内したり、Googleストリートビューで建物周辺を説明することも可能です。法人営業であればお客様のところにわざわざ行かなくてよくなります。
三番目におすすめしたい方法は、オンラインレッスン・オンラインコンサルティングです。これも双方向コミュニケーションが基本です。例えばピアノのレッスンであれば、鍵盤をたたく映像と音でレッスン可能です。オンラインレッスンだけでは不安という方には、月のうち3回をオンラインレッスンで、1回を対面式レッスンというやり方にしてもいいでしょう。生徒の手の動きを録画して、録画映像を先生と生徒が一緒に見ながらどこが良かったのか、どこが悪かったのかといったことを解説することも可能なので学習効果が高そうです。
経営相談、人生相談、健康相談、カウンセリング、占いなどについては、オンラインサービス化が比較的容易なサービスと言えそうです。研修・セミナーなどについては、Zoomを使ったオンラインセミナーをする動きが既に3月頃からありましたね。
もちろん、上に紹介したもの以外にも、これから新しいアイデアが登場してくると思います。同業他社がやっている面白い取組みを参考にしてもいいし、世の中にまだない新しい取組みにチャレンジしてもいいと思います。
今なら費用の大部分が補助金でカバーされ、費用リスクも軽減されますので、この記事を最後まで読んでいただけた方には、ぜひチャレンジしていただきたいと思います!