こんにちは。RMCオフィスの松本です。
最近、事業再構築補助金が注目されています。
当社でも問合せを受けることが多く、今までにないほどの関心の高さを肌で感じます。
相談の多くは、
- 「こういう設備を買いたいのだけど対象になりますか?」
- 「今度、こういうサービスを始めたいのだけど採択されそうですか?」
というものが多いのですが、公募要領が出るまでわからないというのが正直なところです。
さて、2月15日付けで中小企業庁から「事業再構築補助金の概要」が発表されています。
公募要領が正式に公開されたら、公募内容に応じて記事を修正する予定です。
公募時期について(超重要)
- 公募は今年度だけで5回を予定(今回で終わりではありません)
- 1回目の公募開始は3月(もうすぐです)
- 1回目の公募期間は1カ月程度を予定(準備期間短い)
公募要領が発表になってから動いていたのでは間に合わない可能性があります。
結論:今すぐ準備に取り掛かったほうがよい
ということです。
この記事を読んでいただきたいのは以下の方です。
- ①自力で事業再構築補助金の申請書を書こうと思っている方
- ②コンサルタントのアドバイスを得ながら、事業再構築補助金の申請書を書こうと思っている方
- ③コンサルタントに事業再構築補助金の申請書作成を依頼する方
記事の信頼性
中小企業診断士として独立し、中小企業の経営支援をしています。
補助金コンサルの経験は10年になります。
>> 過去の採択実績はこちら
Twitter(@KeisukeMatsumo7)
申請要件
申請要件は以下のとおりです。
- 売上が減っている
- 事業再構築に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
売上が減っている
原文は以下の通り。
申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している。
「申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月」については連続している必要はないようです。
つまり、2021年3月に申請する場合、直近6カ月の売上高が、
- 2021年2月:300万円
- 2021年1月:250万円
- 2020年12月:400万円
- 2020年11月:450万円
- 2020年10月:400万円
- 2020年9月:350万円
だとすると、
少ない順に250万円(1月)、300万円(2月)、9月(350万円)の3か月合計900万円
を2019年1月~3月または2020年1月~3月の合計売上高と比較して10%以上減っていればOKとなります。
事業再構築に取り組む
事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う。
業態転換、事業・業種転換はハードルが高そうなので、新分野展開で申請する事業者が多そうです。
認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する【重要です】
- 事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する。補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する。金
融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。 - 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する。
補助金額3,000万円を超える案件は金融機関も参加して策定するという要件が追加になりました。
補助金額・補助率
現時点で明らかになっているのは以下の6つの申請枠。
- ①中小企業 通常枠 補助額:100~6,000万円、補助率2/3
- ②中小企業 卒業枠 補助額:6,000~1億円、補助率2/3
- ③中堅企業 通常枠 補助額:100~8,000万円、補助率1/2
- ④中堅企業 グローバルV字回復枠 補助額:8,000万円~1億円、補助率1/2
- ⑤緊急事態宣言特別枠 中小企業 従業員数による、補助率3/4
- ⑥緊急事態宣言特別枠 中堅企業 従業員数による、補助率2/3
緊急事態宣言特別枠
上記⑤⑥の緊急事態宣言特別枠の要件は以下のとおり。
令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者
売上比較の考え方が申請要件と違う点に注意が必要ですね。
要件OKなら緊急事態宣言枠で申請すべき
理由は以下のとおり。
- 敗者復活戦がある(緊急事態宣言枠で審査されて落ちても、通常枠でもう一回審査される)
- しかも敗者復活戦では加点を受けられるので有利
- 補助率もアップ
ただし、補助金額の上限が小さくなります。
- 従業員数5人以下:上限500万円
- 従業員数20人以下:上限1,000万円
- 従業員数21人以上:上限1,500万円
大きな補助金額を狙っている事業者は通常枠で申請するしかなさそうです。
中堅企業の定義
中小企業の定義は以下の中小企業庁のサイトで確認することができます。
気になる中堅企業については、下記要件で調整中とのことです。
中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金10億円未満の会社(調整中)
あるいは、
中小企業の範囲に入る会社のうち、直近3年間の課税所得が平均15億円以上の会社
も中堅企業とみなすようです。
補助対象経費
補助対象経費は以下のとおり。
【主要経費】
- 建物費(建築・改修費、撤去費)
- 設備費
- システム購入費
特筆すべきなのは、建物費がOKとなったことでしょう。
【関連経費】
- 外注費
- 技術導入費
- 研修費
- 広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展費)
- リース費
- クラウドサービス費
- 専門家経費
なお、関連経費には上限が設けられるようです。
ものづくり補助金の場合は、経費全体の1/2または1/3という形で上限額を制限しているので同じような考え方になるかと思います。
補助対象外経費
- 従業員の人件費や旅費
- 不動産購入費
- 株式購入費
- 車両
- 汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)
- 販売目的の商品の材料費
- 消耗品費
- 水道光熱費
- 通信費
このへんの考え方は一般的な補助金の考え方と同じです。
事業計画
事業計画に書くべき内容として以下が例示されています。
- 現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
- 事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
- 事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
- 実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
審査の視点(超重要です)
具体的な審査項目は公募要領で明らかになるそうですが、以下の項目が例示されています。
- 事業化に向けた計画の妥当性
- 再構築の必要性
- 地域経済への貢献
- イノベーションの促進
準備しておくべきこと
電子申請用のアカウント(GビズIDプライム)
事業再構築補助金は原則として電子申請による受付のみとなる見込みです。電子申請は「JGrants」というシステムを用いており、「JGrants」を利用するためには「GビズIDプライム」というアカウントが必要になります。アカウント申請からアカウント発行まで日数を要する可能性がありますので、これだけは早めに対応しておきましょう。
GビズIDについては以下の記事でも紹介しています。
-
-
電子申請システム「GBizIDプライム」のアカウント作成方法(2022年7月5日更新)
現在、事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模企業持続化補助金、Japanブランドなど、国が管轄する補助金の申請方法は ...
書類関係(事業計画書以外)
公募開始前に以下の書類は準備しておくとよいです。
- ①決算書
- ②確定申告書(法人事業概況説明書)
- ③申請月から遡って6か月分の売上台帳
- ④補助対象経費として申請する予定の製品のカタログなど
- ⑤補助金対象経費として申請する予定の経費の見積書
決算書
提出を求められます。電子申請システムにPDFファイルを添付する形になることが予想されます。
少なくとも2期分あるいは3期分の決算書をPDFファイルで準備しておきましょう。
②確定申告書(法人事業概況説明書)
売上が減少したことを証明する証拠書類として提出を求められることが予想されます。
確定申告書の中に法人事業概況説明書という書類があり、そこに月次売上が記入されています。
2019年1月~3月または2020年1月~3月のうち、1月~3月の合計売上高が高い方をPDFファイルで準備しておくとよいでしょう。
③申請月から遡って6か月分の売上台帳
②と同じく、売上が減少したことを証明する証拠書類として提出を求められることが予想されます。
一般的には売上台帳が該当しますが、月次の売上高が分かれば他の書類でも良いでしょう。
④補助対象経費として申請する予定の製品のカタログなど
提出義務はないと思いますが、カタログが添付されていると補助事業の内容を理解する助けとなることが多いので、支障がなければ準備しておくとよいでしょう。
⑤補助金対象経費として申請する予定の経費の見積書
提出義務があるかどうか現時点では不明ですが、補助対象経費の妥当性を示す根拠資料となることが多いので、支障がなければ準備しておくとよいでしょう。
なお、相見積書が必要となる可能性は低いと考えています。
事業計画書を書くために:現状
会社概要
- 会社として大事にしている価値観(経営理念)
- 沿革
- 現在の事業内容
- 取扱商品またはサービス
- 売上比率(事業や商品サービスが複数ある場合)
- 自社の組織概要(全体の従業員数および部門毎の部門名と人数など)
- 業績ピーク時の時期、売上規模、従業員数
どんな会社が申請してきたのかを知ってもらうことは大切です。事業再構築補助金は「企業の思い切った事業再構築」を支援する補助金ですので、今まで何をやっていた会社なのかを伝えることが特に大切だと考えています。
経営概況
- 過去3~5年の売上増減の傾向
- 自身が考えている売上が減った(増えた)理由
- 同業他社より優れていると思う点(思いつく限り全て)
- 自社が抱えている問題点(思いつく限り全て)
- 自社の経営に影響を与えている(これから影響を受けそうな)世の中の変化
- 新型コロナによる影響(緊急事態宣言の影響で売上が下がった場合は、その影響についても詳しめに)
- このまま今の事業を続けていった場合の今後の見通し
「世の中の変化に対応する」ということを踏まえるのがポイントです。既に変化が始まっているもの、これから変化し始めるもの色々ですが、「世の中の何がどう変わって、それがどう自社の経営に影響するのか」ということを明らかにすることが大切かなと考えています。
そのうえで、「だから、新分野展開(業態転換、業種転換)に取り組む必要がある」ということをアピールする必要があります。
事業計画書を書くために:将来
- 新規事業に取り組もうと考えた理由
- 新規事業の内容
- 自社がこれまで行ってきた既存事業との違い
事業再構築補助金は「企業の思い切った事業再構築」を支援する補助金ですので、生産設備を1台増やすとか今までの延長線にあるような取組みは補助事業の趣旨に沿わないと思います。それでも採択されるかもしれませんが、採択される可能性は低くなるでしょう。
「今までと何が違うのか」
これをはっきりさせましょう。
販売ターゲット
- 新規事業で販売する商品・サービスの販売ターゲット(顧客層)
- 新商品・新サービスのターゲットは既存事業のターゲットと重なるか
- 想定する顧客層のニーズ
- 市場規模
言うまでもなく、事業計画書を書くときには必ず出てくる最重要論点です。
既存事業の顧客層と新規事業で狙う顧客層が同じかどうかというのは大切なポイントになります。
大切だと考える理由
顧客開拓が楽だからですね。今までと同じ顧客層だから、どんなニーズがあるのかもよくわかっているし、既存顧客のリストがあれば新商品や新サービスの宣伝・告知もすぐできます。
販売戦略
- 想定している販売形態(店舗販売、ネット販売、自社営業マンによる直接販売、代理店活用、問屋販売など)
- 想定している販売先へのアプローチ方法(DM、ネット広告、メディア広告、既存取引先へのアナウンス、第三者からの紹介など)
- その他、売り方に関する工夫点
- 販売開始から3年間の見通し(客数、販売数、売上高)
どうやって売っていくのかという話です。意外としっかり考えていない方が多いです。ただし、補助金の審査項目に販売戦略や販売手法を評価する直接的な記述を見かけることもないです。
事業を立ち上げるうえでは、販売戦略が一番大事になることの方が多いのに。
優位性
- 新規事業で行う商品・サービスのセールスポイント
- 他社が販売している類似の商品・サービスについて
- 他社の類似商品、類似サービスとの違い
- 他社の類似商品、類似サービスとの価格比較
「これは売れる!」と思ったものは、たいてい他所が似たようなものを販売しています。
大切なのは、さまざまな類似商品、類似サービスがあるなかで、お客さんがあなたの商品、サービスを選ぶ一番のポイントは何かということです。
ちなみに優位性の高い商品・サービスほど一言で良さが伝わります。長々と説明しなければ伝わらないものは微妙なものが多いです。
組織体制
- 新規事業の組織体制
- キーパーソン及びキーパーソンが果たす役割
- 社外の協力者(仕入先など含む)
補助事業の実施体制も補助金申請書では必ずといっていいほど問われる内容です。体制表や体制図でまとめるとわかりやすいです。
資金調達の目途
- 発売開始(サービス開始)までの総予算
- 資金の捻出方法(手元資金、金融機関からの借入、投資家からの出資など)
形式的なものから、内容をしっかり問うものまでありますが、必ず問われる内容です。補助金によっては、補助対象経費の捻出方法だけ書けばいい場合もあります。
補助事業について
- 事業立ち上げまでにやるべきこと(全て)
- 事業立ち上げにあたって気がかりなこと(全て)
- 補助金の使い道
順張りで考えるなら、
①現状分析→②目指す姿→③経営課題→④具体策
で考えます。④のうち、大きな出費を伴うものを補助金で支援してもらうというイメージ。
逆張りで考えるなら(補助金を考える人はこっちの人が多い)、
④具体策→③経営課題→②目指す姿→①現状分析
もしくは、
②目指す姿→④具体策→③経営課題→①現状分析
のパターン。
実際は①~④をいったりきたりしているうちに頭が整理されていきます。
まずは、④具体策の洗い出しをするのが近道です。
会社全体の経営計画について
- 5年後の売上と営業利益
- 5年後の従業員数
事業再構築補助金でも、数値計画は要求されると思います。
応募要件に、
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。
と記されているので、ものづくり補助金の数値計画と似たような数値計画表を作ることとなるでしょう。
ちなみに、
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 +減価償却費
です。